2000年11月28日
社会民主党全国連合
幹事長 渕上貞雄
参議院で修正のうえ11月27日に可決し衆議院に回付された「少年法改正案」が、本日の衆議院本会議で成立した。法務委員会での参考人のほぼすべてが立場の違いを超えて慎重審議を訴えるなかで、国会日程にあわせて拙速な採択を強行することは、国民を愚弄するものといわざるを得ない。
今回の「少年法改正」は「少年犯罪の凶悪化、低年齢化」という、事実と異なる誤ったイメージとそれによって形成された「世論」に安直に迎合するもので、少年法の保護主義の理念を後退させる危険が強い。「少年の凶悪犯罪を抑止」するという立法趣旨は審議早々から破綻を来たし、提案者自身も犯罪抑止効果を否定せざるを得なかったばかりか、最後は立法動機を少年に対する規範意識の強化とすりかえる有り様であった。最近の少年による凶悪犯罪は、家庭や学校をはじめ混迷する社会を反映した少年の心の問題が複雑に折り重なった末に発生しており、単純な厳罰化や「規範の強化」で防げるものではない。今回の、少年法改正はあまりにも拙速な小手先の対策であり、子どもの人権と被害者のやり場のない怒りを「世論」受けを狙った政治の道具とするものである。
これまでの少年司法が犯罪被害者の救済に怠慢であったことは謙虚に反省し、早急に対策をする必要があるが、今回の少年法改正はその意味ではまったく不十分なものである。その反面、検察官の関与を強めることで冤罪を多発させる危険があるだけでなく、少年への教育の機会を狭め更生を阻害する可能性が高く、新たな被害者を生み出すことにもつながりかねない。
少年犯罪対策は青少年のおかれた状況に真摯に目を向け、着実な取り組みを続けなくてはならない長期的な課題であり、今回の少年法改正のような安直な「対策」が何の解決にもつながらないことは明らかである。社会民主党は犯罪を犯した少年の矯正と社会復帰支援のための施策や犯罪被害者の救済策の充実のために、今後も着実な少年犯罪対策に取り組んでいく決意である。
以上