2001年9月27日

米国同時多発テロ事件に対する社民党の態度について(談話)

社会民主党幹事長
渕上 貞雄

一、社民党は、米国における同時多発テロは、いかなる理由によっても許されない残虐非道な行為として強く非難するとともに、犠牲者とその家族、並びにアメリカ合衆国政府に心からの哀悼とお見舞いを申し上げてきた。

一、今回のテロ行為に責任を有するものは法と正義の下に裁かれなければならない。国際条約並びに国際法に基づいた国際法廷において、国際犯罪として厳正な裁判が行われるべきである。

一、したがって、事態の解決に軍事的手段がとられるべきではない。われわれは報復と憎悪の果てしない連鎖が起きることを何よりも恐れる。「戦争と殺戮の世紀」といわれた二十世紀の過ちを決して繰り返してはならない。

一、国際法では、いかなる紛争に対しても、まず第一に「平和的解決への努力」が義務づけられている。わが国は、人間の安全保障ならびに憲法の平和主義、国連憲章の基本に立ってあらゆる外交的努力を行うべきである・「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努め」ることが、テロ行為を地球上から追放するための道である。また、日本は、1970年代より親アラブ外交を続けており、アメリカとは異なるチャンネルでの外交努力が可能である。

一、しかもテロは国際法上、国際犯罪として扱われてきた。米国は今回の事件を戦争として規定しようとしているが、その根拠が明らかではない。また米国は実行者を特定するに足るだけの証拠をまだ提示していない。

一、しかるに政府はさる9月19日の参議院予算委員会において、「支援策は確定していない。検討中である」としながら、同夜、「米国における同時多発テロへの対応に関するわが国の措置について」を唐突に発表した。これは甚だしい国会軽視であるとともに、その内容は集団的自衛権の発動や海外派兵、交戦権の行使につながる可能性があり、絶対に認められない。このような国家の基本原則の関わる問題を国会で何らの審議もないまま対米協力優先で方向付けることは議会制民主主義の否定であり、憲法遵守義務にも逸脱する。

一、また、「米国に協力するインドとパキスタンに対して緊急の経済支援を行う」ことは、そもそも98年に両国の核実験に際してとられた制裁措置を無効にし、核保有を是認・援助することにつながる。これはわが国が進めてきた非核政策にも反し、もはや外交の体をなしていない。また米国は核兵器の使用を含むあらゆる手段を行使して報復を行うことを表明しているが、わが国はこの米国に対して白紙委任をしようとしている。わが国はあらゆる核兵器の廃絶を国是としており、政府与党の姿勢は断じて認められない。

一、今回のテロ事件に対しては、国際緊急援助隊などの活用によって、憲法と現行法の枠内で対応が行われるべきであり、米軍の後方支援のための新法や自衛隊法の改正、有事法制の検討などに関しては断固反対である。

一、米国の対応により、アフガニスタン国境には、数十万人の難民が集まっている。旱魃、飢餓、飢饉、貧困、疾病、厳しい気候などに苦しむ難民への医療、食料などの支援は人道上、喫緊の課題であり、人間の安全保障の観点からも推進されるべきである。