社会民主党幹事長
渕上貞雄
一,本日、第百四十五回通常国会が閉幕した。咋年の参議院選挙における自民党大敗を受けて発足した小渕政権は、数合わせのみに奔走し、その結果、数の力だけが頼りの「理念なき野合政権」と成り果て、既得権益擁護、利益誘導型の政治を進め、改憲を視野に入れた危険な側面をあらわにしてきた。
二,新ガイドライン関連法案、組織犯罪対策3法案、住民基本台帳法改正案は、憲法の枠組みを越える危険な法案であり、社会民主党は、広範な国民とともに、これら悪法と断固対決してきた。しかしながら、「自自公」体制が数のみの力によって、議会制民主主義を否定する暴挙でこれを強行したことは、言論を圧殺し、平和と人権を脅かそうとする小渕政権、「自自公」体制の意図と危険性をかえって露呈させるものである。
三,さらに、第百四十五同通常国会の会期末にいたって、憲法調査会の設置、衆議院の比例区定数の五十削減、国旗・国歌法案など、およそ国民感覚からかけ離れた法案が政権の延命のためのみに提案され、審議さえもおろそかにされるという「理念なき反動化」が進行した。
四,国旗・国歌法案や憲法調査会の設置法案のような、いわゆる「対決型」の法案が、自自公三党に加え、一部野党も巻き込んで八割以上の賛成多数で可決されるという事態は、一咋年の駐留軍用地特別措置法以来である。社会民主党は、少数意見を顧みず、多数の暴力で危険な法案の成立を強行するという、かつての翼賛政治体制を彷彿させる極めて危険な議会状況に対し屈することなく、断固たる正義を持って立ち向かう。
五、わが党が強く求めている政治倫理の確立についても、自自公体制は政治改革を衆議院の比例代表の定数削減問題にすり替え、政治倫理の確立もないがしろにしている。会期末に至り、ようやく立候補制限、洋上投票、ポスター規制、株の仮名取引の禁止に関する法案が成立したが、全く不十分である。清潔かつ信頼できる政治の実現を国民は何よりも求めており、これに逆行することは許されない。企業・団体献金の禁止は急務の課題であり、参議院に提案されているあっせん利得行為を処罰するための地位利用収賄等処罰法の成立や政治改革関連法案の拡充・強化は急務である。とりわけ、企業・団体献金については、二〇〇〇年一月から禁止されることになっているにも関わらず、自民党がこれを先送りし、反故にしようとしていることは国民に対する裏切り行為であり、断じて許すことはできない。
六,小渕政権は、不況の最大要因といわれ、国民の生活不安の根源ともなっている社会保障制度改革に対しても、国民不在の議論を続け、改革を怠った。年金改革関連法案は、財源をめぐって与党内の調整が長引き、最終盤に至ってようやく提出されたものの、審議は行われなかった。また、医療制度改革についても、すべての医療制度改革が滞り、薬価制度改革をはじめ、一つの法案も提出できていない。介護保険についても国民の期待・疑問になんら応えようとせず、与党内で選挙目当てともいえる無責任な先送り論や保険料凍結論などを横行させ、国民の介護保険に対する不安をかき立てる結果となった。
七,社会民主党が提唱した情報公開法案や公務員倫理法案はようやく成立したが、明治以来の中央集権行政を転換する地方分権一括法と中央省庁等改革関連法案については、内容についての十分な審議が必要だったにも関わらず、日程を優先して一括して審議されるという暴挙が行われ、法案の意義も国民からの信頼も損なわれる結果となった。
八,党が主導的役割を果たした男女共同参画社会基本法の制定やわが党主導で本会議決議が行われた食料・農業・農村基本法、参議院で党が提出したPRTR法案などは、社民党の政策の先進性、優位性と制度本来のあるべき姿を示したものとして高く評価された。
九,会期末に提出された補正予算案は、五千億円という不十分な規模やその波及効果が見込めない点、産業活力再生特別措置法案とともに、リストラを誘発する側面をも持つものであり、雇用対策に逆行するものである。既得権擁護・利益誘導型から国民生活重視型の予算への抜本的な発想の転換が求められている。
十,平和憲法を守り、民主主義を確立し、まじめに働く人々、社会的に弱い立場にある人々が安心して暮らすことのできるよう、社民党は土井党首を先頭に「がんこに平和、げんきに福祉」を掲げ、広範な国民とともに、小渕内閣、「自自公」体制に対し、あらゆる英知を結集してたたかう。