1999/3/19

衆院防衛指針特別委員会での辻元清美議員の質問

○山崎委員長 次に、辻元清美君。

○辻元委員 社民党の辻元清美です。
 日米新ガイドライン関連法案につきましては、私たち社民党は土井党首を先頭に反対を主張しているということは、総理も既にもう御存じだと思うんです。私は、きょう持ち時間が十分しかありません。次の委員会で本格的な議論をさせていただきますが、反対であるからといって、答弁をいいかげんにせずに、心を込めてまず答えていただきたいということを最初に申し上げたいと思います。
 さて、これらの法案につきましては、徐々に市民の間で関心が高まってきているというふうに大臣の方々も御認識されているのではないかと思います。
 私は大阪府の高槻市というところに住んでいるんですけれども、先週、この法案に対する学習会を行いました。ちょうど一年前に学習会を行ったときは、残念ながら数十人しか集まらなかったんですけれども、先週やりましたらこの数倍の人たちが集まっているんですね。特にその中で、この法案に対して一番関心やそれから疑問、懸念が出た点というのは、やはり自治体や民間による後方地域支援、このことに対して市民の皆さんがだんだん、これはもしかしたら自分たちみんなに関係することやないかというふうに心配が広がってきているんですね。まさしくここが問題だと思います。すべての人に関係することであるから、私は、きょうはこの後方地域支援について、民間や自治体の協力についてポイントを絞ってお聞きしたいと思います。
 さて、この後方地域支援の輸送協力について、まず総理にお聞きします。民間の船や飛行機による武器弾薬や武装した米兵の輸送協力もこの中に入るというように、予算委員会では政府は御答弁されていますけれども、この認識で変わりはないですね、総理。
 まず最初にやはり総理、どうですか。総理、答えてくださいよ。心を込めてくださいと言いましたでしょう。

○佐藤(謙)政府委員 実際どういったニーズが出るかというのは、いろいろな状況に応じて変わりますので確定的なことは申せませんけれども、そういう状況は排除されていない、こういうふうに思います。

○辻元委員 排除されていないという御答弁でした。
 さて、私は先週、代表質問をさせていただきました。その中で、総理に対しましてこういう質問をいたしました。安全な後方地域なんというのはないんじゃないですかというふうに総理にお聞きしました。これに対しての総理の御答弁、ここに速記録があります。これに対してこういうふうにお答えになっています。「後方地城支援についてお尋ねでありましたが、周辺事態安全確保法案に基づき実施することを想定している後方地域支援が後方地域において実施されることにつきましては、防衛庁長官が、軍事的な常識を踏まえつつ各種の情報を総合的に分析することによりまして、合理的に判断することができると考えております。」このように御答弁されました。
 この認識は一週間たった今もお変わりないと思いますし、この御答弁の中で、私の理解では、防衛庁長官の役割が非常に重要である、この認識でよろしいでしょうか、総理。これは総理の御答弁ですから、お答えいただけると思います。

○小渕内閣総理大臣 そのとおりでございます。

○辻元委員 それでは、この総理の御答弁の中で、防衛庁長官の役割が非常に重要であるという御答弁でしたが、「防衛庁長官が、軍事的な常識を踏まえつつ」ということになっております。
 そこで、防衛庁長官にお聞きしたいと思います。
 この後方地域支援を行うに当たっての長官の軍事的な常識とはどういうことなんでしょうか。具体的にわかりやすく説明していただきたいと思います。どうぞ。−−いや、これは総理が「防衛庁長官が、軍事的な常識」これを大事やとおっしゃっているわけです。これは基本だと思うんですよ。委員長、いかがでしょうか。私は長官に聞いています。委員長、長官にお願いします。長官の後に補足していただいても結構ですよ

○佐藤(謙)政府委員 まず、事実関係でございますので、私の方から前提のお話をさせていただきたいと思います。
 後方地域に入っているかどうかということを判断する場合には、その紛争なり戦闘の全般的な状況、あるいはその戦闘行為を行う主体の能力、装備品の攻撃能力であるとか、あるいはその展開状況等を踏まえまして、それでもって判断をしていく、こういうことになります。

○辻元委員 私は、今政府委員の方から御説明を受けましたが、ここ、基本だと思うんですね。この総理の御答弁です。そして、「防衛庁長官が、軍事的な常識を踏まえつつ」とおっしゃっていまして、きょう、この委員会の初めに、私はその防衛庁長官から法案の提出者として趣旨説明を受けたわけです。この法案の責任者であるはずですから、ぜひ長官に御所見を伺いたいと思います。どうでしようか。

○野呂田国務大臣 軍事的常識というのは軍事的常識でありまして、今防衛局長から答弁したのがそのものであります。私が判断する場合には、それに外務省から得た情報とか米軍から得た情報等を判断して決めていくわけであります。

○辻元委員 それでは長官に引き続きお伺いしたいんですが、私は、なぜここにこだわるかといいますと、総理の御答弁の中の趣旨の半分がここなんですよ。ですから、長官がこれを判断されるのに非常に重要な役を担われるともおっしゃっているわけですね。それで、あいまいなんですね。ではこの答弁で、軍事的な常識を踏まえつつどうのこうのといって書いてありますけれども、これじゃ意味がさっぱりわからない。ここを一番、先ほども申し上げましたように、市民が心配している点なんです。ですから……(発言する者あり)

○山崎委員長 静かにお願いします。

○辻元委員 横から言わないでほしいんですけれども。十分しかないので真剣なんです。それで、私は、今の長官の御答弁では非常に不満です。
 それで、私の軍事的常識というのをちょっと、私はこうじゃないかなと思うんですね。
 一つ。一たび戦争が行われた場合、前方も後方もない。イラン・イラク戦争のときに日本の民間のタンカーも爆撃を受けたというようなことを例にとりまして、代表質問のとき私は申し上げました。二つ目。武装した米兵や武器弾薬の輪送を手伝うということは、相手国から見たら敵国になり、攻撃の対象になる。これは軍事的な常識じゃないかと私は思います。三つ目。戦争では補給路を断てというのが常識だと、私は戦争に行ったおじいちゃんから聞きました。
 ということで、私は、先ほどからの御答弁ですと、さっぱり理解ができぬ。私が理解できぬということは、一般の市民もできないのではないかというふうに思うわけですね。
 先ほどの防衛庁長官の御答弁では、私は、失礼ですが、防衛庁長官の常識は軍事的非常識じゃないかというふうにさえ受け取らざるを得ない御答弁でなかったかと思うんですが、いかがでしようか。

○野呂田国務大臣 どちらに常識があるのかよくわかりませんが、私どもとしては、各種の戦闘が行われる形態についての軍事的な常識を踏まえる、これは断固そういうことであります。自衛隊がいろいろな情報源や常続的な監視活動によって収集した情報というのは、これはかなり確かで濃密なものでありますから、そういうもので判断します。
 それから、先ほども申しましたが、外務省が収集した情報、必要に応じて米軍から提供された情報等を総合的に分析することによって、私どもが合理的に判断することは可能であると確信を持っております。

○辻元委員 今お聞きしましたけれども、私は代表質問のとき、こういうことも申し上げました。私たち日本は、明治維新以来何回か戦争に参加しているんですけれども、日本が侵略されてから始めた戦争は一度もない、これは事実だと思います。いつもやはり邦人保護とか物資の輸送ということで外に出ていって、そこでいろいろな不測の事態が起こって全面戦争に至っているということを、私たちは歴史から学んでいるはずなんですね。そこで私はここにこだわっているわけです。後方地域支援はそのような事態に広がる危険性を私は持っていると思うんです。やはり武力行使に至りかねない危険性もありますので、そうなってくると憲法違反と言わざるを得ない。
 というところで私の時間が参ってしまいましたので、やはりきょうの結論も、この法案に対しては反対と言わざるを得ないということで締めくくらせていただきまして、次回、またどんどんやりますので、これできょうは終わります。以上です。

○山崎委員長 これにて辻元君の質疑は終了いたしました。