1999/3/24

衆議院安全保障委員協議会での辻元清美議員の質問

○二見委員長 これより安全保障委員協議会を開会いたします。
 国の安全保障に関し、日本海における不審船問題について議事を進めます。
 この際、防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。野呂田防衛庁長官。

○野呂田国務大臣 昨日、警戒監視活動を実施中の海上自衛隊の航空機P3Cが二隻の不審船舶を発見しました。このため、訓練に向かっていた護衛艦を現場に向かわせ、不審船舶を確認し海上保安庁に通報しました。概要は次のとおりです。
 まず、海上自衛隊の航空機P3Cが、午前九時二十五分ごろ、能登半島東方約二十五海里の領海内において、漁船二隻、すなわち第二十八信盛丸、第二大和丸を発見しました。以後、現場に進出した護衛艦「はるな」が午前十一時ごろ、船名を確認し、直ちに、海上保安庁に連絡しました。第二十八信盛丸は追って不審船舶ではないと確認しました。
 また、海上自衛隊の航空機P3Cが、午前六時四十二分ごろ、佐渡島西方約十海里の領海内において、漁船第一大西丸を発見しました。以後、現場に進出した護衛艦「はるな」が、午後十二時十分ごろ船名を確認し、午後十三時ごろ海上保安庁に連絡しました。
 これらの船舶には、漁船の名称が表示されておりましたが、国旗を掲げす、漁具も積んでおらず、非常に不審なアンテナ等が装備されていたこと等から、不審船舶として、海上保安庁に連絡したものです。
 以後、海上保安庁の航空機及び巡視船艇によりこれを追跡し、まず現場に到着した航空機により停船命令を実施するとともに、さらに追尾した巡視船艇からも再度停船命令を実施しましたが、これに応じなかったことから、巡視船艇により威嚇射撃を実施する等必要な措置を講じましたが、速度を上げたため海上保安庁の巡視船艇等による追尾が困難となったものです。
 これを受けて、政府として検討した結果、海上における人命もしくは財産の保護または治安の維持のため特別の必要があると判断し、自衛隊法第八十二条に基づき、海上における警備行動をもって対処することとしたところであります。
 不審船のうち第二大和丸については、必死の追跡、停船命令、警告射撃にかかわらず、防空識別圏を越え、北朝鮮方向に逃走しましたので、これ以上の追跡は相手国を刺激し、事態の拡大を招くおそれがあると判断したので、午前三時二十分、追尾を中止しました。
 その際、第二大和丸に対し、海上自衛隊の護衛艦「みょうこう」は、五インチ砲による警告射撃を十三回各一発、百五十キロ爆弾四発をもっての警告を発しました。
 また、第一大西丸に対しては、護衛艦「はるな」が追跡、停船命令、五インチ砲を六回十発の警告射撃を行ったところであります。その後、第二大和丸を追跡した「みょうこう」を、「はるな」、「あぶくま」とともに、第一大西丸の追尾に当て、全力を挙げ停船の実施に夜を徹して当たらせ、「はるな」は警告射撃を六回十二発、合計十二回二十二発を発射するとともに、百五十キロ爆弾を二回計八発を投下し、全力を尽くして停船を求めましたが、第一大西丸は、それを無視し、午前六時六分、我が国の防空識別圏を越え北朝鮮方向に逃走いたしました。これ以上の追跡は、第二大和丸の場合と固じ観点から追尾を中止するとのやむなきに至ったところであります。
 昭和二十九年に自衛隊発足後四十五年経過しましたが、今回初めて自衛隊法八十二条の海上における警備行動を発動したところであり、結果は、十分に武器の使用ができない等の法律上の制約があり、不審船の逃走を許しましたが、この種の事案に対し、海上保安庁の対応だけでは不十分な場合には自衛隊がこれに当たるという断固たる我が国の決意を内外に示したことは、今後、この種の事案の発生に対する極めて大きな抑止力となるものと確信いたします。
 この種の事案に対し、第一義の所管官庁である海上保安庁と防衛庁の緊密な連携のあり方等については、今後、今回の経験を踏まえ、遺漏のなきよう万全を期してまいりたいと考えております。
 なお、現時点においては、不審船舶は、我が国の防空識別圏に配備した航空機P3Cからはレーダー探知ができなくなるほど遠くに移動しており、また、我が国周辺海域も特異事象は見られないことから、私の命により、海上警備行動は本日十五時三十分をもって終結することとしたものであります。


○二見委員長 次に、辻元清美君。

○辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。まず、今回の日本海におけるいわゆる不審船問題について幾つか確認させていただきたいと思います。まず、長官にお聞きしたいんですが、今回はどういう根拠で自衛隊法の八十二条を発令する要件が満たされたと認定されたのか、お答えください。

○野呂田国務大臣 ほうっておけば日本の秩序の維持に大変な阻害要件になると判断したからであります。

○辻元委員 もう少し具体的に、どういう事態を想定されたのでしょうか。お願いします。

○野呂田国務大臣 政府としては、不審船舶発見以来、海上保安庁の航空機及び巡視船艇によりこれを追跡し、まず現場に到着した航空機により停船命令を実施するとともに、さらに追尾した巡視船艇からも、再度停船命令を実施しましたが、これに応じなかったことから、巡視船艇により威嚇射撃を実施する等必要な措置を講じたものでありますが、これらに一切耳をかさず、それまで八ノットぐらいの能力しかないと見せかけて、ついには三十五ノットぐらいの速度を出して、日本側の追尾を不可能にするような大変悪質なものでありました。
 これを受けまして、政府として検討を行った結果、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要があると判断いたしまして、自衛隊法八十二条に基づき、海上における警備行動をもって対処することとしたところであります。

○辻元委員 大変悪質なものであるという判断であったとおっしゃいました。
 さて、それでは、海上保安庁にお聞きしたいんですが、先ほど、本件のような事例に当たるというようなのは今までで十八隻というような話がありましたが、この中で、最近の事例、どういうものがあったか、ちょっと紹介していただけますか。

○楠木政府委員 全体の数は、今先生おっしゃるように、海上保安庁創設以来十八隻でございますが、ちらりと確認したものが平成二年が最後で、平成三年以降は確認をしていない。もうちょっとさかのぼって、少し追跡したような事例になりますと、昭和六十年の四月二十五日でございますが、宮崎沖で発見された不審船を海上保安庁の巡視船艇、航空機により追跡した事例がございます。

○辻元委員 それは一九八五年の四月二十五日に宮崎県の日南市の日向灘での話だと思います。
 このときも、日本漁船に偽装した高速艇ということで、このときは、海上保安庁の巡視船がたしか二十三隻、航空機四機、そしてこれは高速船が四十ノットで逃げまして、千キロに及ぶ追尾をしたというふうに承知しているんですが、そのような事態だったのでしょうか。

○楠木政府委員 多少詳しく申し上げますと、六十年の四月二十五日の午前十時四十分ごろに、宮崎県の水産課から、私どもの油津の海上保安部に県漁業取り締まり船「たかちほ」が、船名第三十一幸栄丸、登録番号OT-二三三一一と表示した十九トン型ハマチ運搬漁船に立入検査を実施しようとしたところ、突然、二十二ないし二十三ノットの高速で南下、逃走したとの連絡がございました。同保安部で調査した結果、この第三十一幸栄丸というのはほかにおるということがわかりましたので、おっしゃるように、巡視船艇、航空機を出動させたものでございます。
 それで、いろいろ引き継ぎ等をやりまして、この後、多数の巡視船艇による停船命令も発して追跡をいたしましたが、不審船はこれを無視して増減速を繰り返し、最大約四十ノットでございますが、ジグザグに西へ向け航走した。そして、二十七日の午前一時十分ごろに、中国のある海域におきまして、追跡中の巡視船のレーダー映像から消滅をしたというような事案でございます。

○辻元委員 私の承知するところでは、このときの船も、異常とも言える高速性、そして多種の無線用アンテナと見られるマスト、それから大分県籍の漁船名、登録番号の偽装状況などがあったというふうに承知しているわけなんですね。
 さて、それでは、このときはこの八十二条は発令されなかったわけですが、今回は発令された。この違いはどういうことなんでしょうか。

○野呂田国務大臣 私は、大変今回の場合が悪質であったということを挙げることができると思います。漁船を装いながら、漁具も漁網も何にも持っていない。それから、物すごい高度な情報収集のためのアンテナを持っている。これは、つぶさに申し上げるわけにはいきませんが、相当高度な情報収集で、勘ぐれば我が国に対するスパイ行為をやることを想像させる、大変機能の高いものを持っている。それから、とにかく、現存する日本の船の名前を詐称したり、あるいはなくなった船であることを知ってそういう船の名前を許称したり、私どもにとりましては我慢の限度を超えた大変悪質なものである。
 そして、こういうことから見ると、日本の秩序維持という点からも、これは過去の例に比較しても許しがたい行為であるというふうに思って、八十二条の適用をした、こういうふうに考えております。

○辻元委員 長官は、きのう寝ていらっしゃらなくてお疲れですので、その前の私の発言をちょっと聞き漏らされたかもしれないのですが、この先ほどの事例の前回ですね、それも、今長官がおっしゃいましたような、偽装の名前を使ったり、それからアンテナをいっぱい立てたり、高速船であったということだったのです。しかし、前回は発令していない。今回発令した理由はという問いだったわけですね。
 それで、今回が悪質だったという根拠に、私は先ほどからのお話を聞いておりましても、以前の事例を見ますと、今回だけが決定的にこの発令につながる悪質というふうには理解できないわけなんです。その点についての御説明を求めているわけです。

○柳澤政府委員 前回の事例はまさに八十二条を適応しなかったケースでございますので、具体的な比較はちょっと難しいかとは思いますけれども、要は、海上保安庁だけでは基本的に対応が著しく困難であるか不可能であるというのが一つの要件であると思います。
 それで、前回のケースは、そういうケースであれば、海上保安庁も相当な勢力で対応されていたわけでありますし、基本的には、結果論はともかくといたしまして、海上保安庁で対応できるケースであったのだろうというふうに推測いたします。

○辻元委員 しかし、前回もこの船は、はっきり言って逃しているのですね。そうすると、海上保安庁で前回は対応できて今回はできなかった。それは、速度が遅かったとか、先ほどからも話が出ていますけれども、燃料が足りなかったということがその根拠であるならば、どうも今回は、ここからは私の私見になりますけれども、別の意図を感じざるを得ないと私は言わせていただきたいわけなんですね。
 防衛庁長官が先ほど、我慢の限度を超えたとおっしゃったわけですが、これ、八十二条を発令するかどうかというのは、我慢の限度を超えたからとかそういうものではなくて、過去の事例であったり、過去の、先ほどの国会の答弁もありましたが、そういうものをかんがみて判断するものであると私は考えますので、今の、よく長官は私と議論するときは本音の言葉で語っていただきますので、それは非常にうれしいんですけれども、我慢の限度を超えたということをもう少し具体的な事例に照らし合わせていただかないと困ると思いながら、残念ながら、時間が来ちゃったんですね。
 私は、今回の発令は過剰反応だったというふうに思います。それは先ほど申し上げましたような根拠です。じゃ何でわざわざ今発令したのかというのは、ちょうどやはりガイドラインの審議が今行われておりますし、何だか政治的な意図があるのではないかというような論評もありますが、私もそういうことを感じざるを得ないというふうに思います。
 皆さん首を振ってはりますけれども、そういうふうに私は感じるという私見を申し上げました。長官、何かございますか。

○野呂田国務大臣 さっき委員の御説明だと、スピードも大変、宮崎の場合の例も速かったというお話ですが、海上保安庁が見失わないで三日間これは追跡したわけであります。だから、当時、海上保安庁の船足で十分対応できたということが私は最大の要件だと思います。今回は、半日ぐらいで猛烈な差をつけられて、これはもうとても海上保安庁じゃ対応できないということが非常にわかりましたから、運輪大臣もそのあたりを考慮して海上自衛隊の要請をしたものだと思います。私の表現で余り俗っぽい話がありましたら訂正させていただきます。また、ガイドライン法とこの八十二条の発動とは全く無縁のものであるということを、これは心からひとつ答弁させていただきます。

○辻元委員 質問を終わります。