2001年12月24日
2002年度政府予算案について(談話)
社会民主党幹事長
福島瑞穂
- 来年度の予算においては、デフレ不況を克服するための予算を編成することが最大の課題である。国民が求めているのは、現在と将来に対する不安の解消であり、生活や福祉など暮らしの安定と安心につながる予算である。政府は何よりもこの国民の期待に応えなければならない。国民の生活を安定させることこそ、不況克服の最大の処方箋だからである。
- 政府与党は歳出総額81兆2300億円、一般歳出規模47兆5472億円(昨年度マイナス2.3%)という緊縮型の予算案を決定したが、その内容は国民生活の切り捨てである。このような形で構造改革を進めようとしても、国民の生活不安は深刻化するだけであり、不況を克服することはできない。政府予算案は国民の期待とはかけ離れている。
- 国債発行額は、表面では小泉首相の公約通り30兆円に抑えられている。しかしこれは、税収不足を特別会計から臨時借り入れするなど、いわゆる「隠れ借金」の手法を駆使しているためであり、実態は国債発行となんら変わりない。見せかけだけの数字合わせを構造改革というなら、これほど容易なことはなく、将来に禍根を残すだけである。政府予算案は「改革断行予算」と銘打たれてはいるが、「構造改革」とは程遠い。
- 政府の医療改革案は、患者負担増・保険料引上げなど弱い者いじめであり、断じて容認できない。患者負担を50%(2割から3割へ)も引き上げる提案がなされている一方、診療報酬は2.7%の引下げに過ぎず、「三方一両損」などとは到底言えない。
診療報酬体系の見直しや高齢者医療制度の創設など、国民に約束をしていた抜本改革をことごとく先送りしたことは、医師会や製薬業界の圧力に屈した小泉・自公保政権の怠慢に他ならない。
- 中小企業対策費が約100億円減額されている。不況のしわ寄せを最も受けている中小企業に対する支援を抜本的に拡充しなければ、日本経済の再生はあり得ない。
また、原子力関係予算は大幅に削減すべきである。循環型社会を構築するためには、再生可能な自然エネルギーに対する支援を抜本的に拡充し、原発予算を大胆に振り向けるべきである。
- 過去最悪水準を更新し続ける失業率などに端的に表れているが、小泉内閣の「雇用無策」によって国民生活はいっそう不安定な状況下に置かれようとしている。その自覚が少しでもあるならば、保護者の経済状況などに左右されることなく、子ども・学生たちの「教育を受ける権利」を保障することは、最優先の政策課題に位置づけられる必要があった。にもかかわらず、来年度予算案において無利子奨学金の規模が縮減されたことは、国民の要請に背を向けるものだと厳しく批判せざるをえない。
- 公共事業費については、「1割カット」の方針は一応達成されたものの、来年度予算で難しいものについては、同時に決定された今年度の第2次補正予算に盛り込んだものも多くみられる。また、シェア配分見直しの視点では、いわゆる重点7分野に重点化しようという指向性がないわけではないが、結果として各事業費とも変動幅は1%未満とほとんど変わっておらず、そのシェアの変動幅自体は今年度予算より後退している。しかも都市再生にしても、従来型のビッグプロジェクト中心であり、本当の意味で都市の住民生活の向上に資するものであるのか疑問を禁じ得ない。社民党が、総合交通体系の整備や生活交通維持、環境対策などのための財源とするよう求めていた道路特定財源の見直し問題にしても不十分なまま終わってる。そういう意味では「構造改革」の名に値しない「かけ声倒れ」の公共事業の見直しといわざるを得ない。
- 外務省報償費は「数字のトリック」で大幅削減されたように見えるが、外務省独自の削減努力はわずか5%にすぎない。機密費搾取事件などの不法行為に対する反省が真摯に行われているとは到底思えない。
ODA予算については、ODAの内容を精査する必要があるが、戦後補償問題とも関係するこれまでのODAの経過を考えると、財政事情によって安易に削減すべきではない。国会におけるチェック機能の強化や市民の関与などの観点からODA基本法を制定し、そのあり方を根本から見直して適正な予算を決定すべきだ。
- 防衛関係費は、一般歳出全体が2.3%減少している中で、昨年を僅かではあるが上回っている。小泉内閣は「聖域なき構造改革」を掲げているが、防衛関係費だけは「聖域」であり、まやかしの構造改革と言わざるを得ない。
また来年度予算案において、初めて空中給油機の導入経費が盛り込まれたが、これを容認することはできない。
- 地方財政計画は初のマイナスとなり、交付税も4%の減となった。小泉首相は「地方財政の構造改革」を提唱したが、「国債発行30兆以下」の首相公約を守るために、過去に借り入れた財政投融資資金の償還期限の大幅延長、今年度限りで廃止されるはずだった交付税特別会計借り入れ方式の継続、赤字地方債の倍増など、小手先のつじつま合わせに終始した。一度廃止を決めた特別会計借り入れ方式の「復活」は、「隠れ借金」を創り出すものにほかならない。同時に、赤字地方債で交付税総額を確保することは、もはや我が国においては、地方財政調整制度が存在しないことと同義である。税財源の自治体への移譲による国・地方の税財政制度の改革こそ本来求められる「構造改革」である。