資源エネルギー庁長官 河野博文 殿

2001年5月28日

刈羽村住民投票結果を尊重し、プルサーマル政策転換を求める要望書

社会民主党党首
土井たか子

 27日に実施された新潟県刈羽村の住民投票の結果、東京電力柏崎刈羽原発でのプルサーマルの実施に反対する得票が投票総数の53パーセントを占めた。この住民投票は、投票率が88パーセントを超え、また、計画の実施に賛成しなかった反対と保留票を合計すれば、村内の全有権者の過半数を超える得票を得たこととなる。プルサーマルの実施に反対する村民の意思は極めて明確となった。

  この投票結果を受け、政府、経済産業省に対し、住民投票に示されたプルサーマル反対の住民の意思を尊重して、柏崎刈羽原発におけるプルサーマル実施の計画を断念することを、我が党は強く求めるものである。
  政府、経済産業省は、この住民投票の運動期間中、経済産業大臣名の直筆署名入りビラを全戸配布し、資源エネルギー庁長官みずから、原子力安全保安院長とともに現地入りするなど、相当に力を入れて賛成票の獲得に奔走した。しかし、この投票結果は、それほど強引なてこ入れを行っても、現地住民はプルサーマルを受け入れられないことを示している。福島県でも、福井県でもプルサーマルは受け入れられておらず、プルサーマルが国民的合意とはほど遠いことを、住民投票の結果は証明している。

 我が党は、脱原発政策を進める立場から、プルサーマルを含む核燃料サイクル政策に強く反対してきた。高浜原発におけるプルサーマルはMOX燃料のデータ捏造によって停止し、福島第1原発におけるプルサーマルは福島県知事の棚上げの意思表明によって延期されている。さらに今回の住民投票の結果を合わせ考えれば、国のプルサーマル政策は全面的な転換を迫られているものといえる。


 我が党が、プルサーマルに反対する理由は次の通りである。

 第1に、プルサーマルに使われるMOX燃料に含まれるプルトニウムが猛毒物質であり、プルサーマルはウラン燃料を使う場合よりも危険である。いったん事故が起きれば広い範囲に被害が及ぶことは避けられない。

 第2に、プルサーマルに使用されるMOX燃料はウラン燃料の数倍の価格で、経済的な合理性がなく、資源の節約にもほとんど意味がない。

  第3に、原子力安全委員会によるプルサーマルの安全審査において、得られている知見について十分な検討が加えられておらず、安全審査そのものに欠陥の可能性がある。


 我が党はさらに進んで再処理政策そのものの転換が必要であることを訴えている。

 もんじゅ事故によって高速増殖炉開発がとん挫している今、使い道がなくなってしまったプルトニウムの消費方法としてプルサーマルが浮上しているのである。しかし、プルトニウムを製造するための再処理工場を2兆1千億円もの巨額の費用を掛けて建設することは経済的にも到底認めることはできない。

 世界の大勢は再処理をしないで、使用済み燃料は直接処分しようとしている。プルサーマルの棚上げを決めた福島県知事も再処理政策を見直し、直接処分の方向も視野において検討を進めると言われている。そして、直接処分までの貯蔵についても、使用済み燃料の貯蔵施設や施設サイトでの乾式貯蔵など再処理よりはるかに安全で、コスト的にも合理的な解決策がすでに考えられている。我が党は、プルトニウムを使用済み燃料から再処理をして取り出すこと自体に反対であり、使用済み燃料は核廃棄物として直接処分すべきであると考える。この住民投票結果をふまえて、国は再処理計画そのものを根本から見直すべきことを訴えたい。


 再処理・プルトニウムリサイクルは放棄した上で、「プルトニウムの消費だけを目的としたプルサーマルを行うべき」だという意見もある。確かに、既にあるプルトニウムは核爆弾の材料ともなるものであり、そのまま保管することはできない。 しかし、プルトニウムの処分の選択肢はプルサーマルのみではない。プルトニウムを核兵器に転用不可能な形態に変えて処分する方法も提案されており、その方がコストも安くなると指摘されている。プルサーマルを中止し、このような方法を現実的な代替案として検討して行くことを我が党は提案したい。

これらを踏まえ、以下要望する。

  1. 刈羽村の住民投票の結果を尊重し、柏崎刈羽原発でのプルサーマル実施を断念すること。

  2. 再処理、プルサーマルなどを織り込んだ核燃料リサイクル政策を、転換すること。

  3. プルトニウムの処分法について、プルサーマルとは別の選択肢について早急に検討を開始すること。

以上