1999年7月29日

人権擁護推進審議会答申について(談話)

社会民主党政策審議会長
濱田 健一

1.本日、人権擁護推進審議会は、「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項についてを答申した。答申は人権教育・啓発の重要性とその推進について述べているが、その内容は具体性に乏しく、新たな問題提起もみられず、評価することはできない。

2.まず大きな問題は、答申が審議会設置の経過を踏まえていないことである。1996年6月、当時の与党三党(社民、自民、さきがけ)が「人権教育・啓発の推進についての法的措置の検討」などについて合意したのを受けて審議会が設置されたのである。しかし、審議会ではなんら新たな法的措置の検討はなされなかった。このことは明らかに公党間の合意事項を無視したもので、容認することはできない。

3.答申では、今後の施策の推進にあたって「政府が速やかに所要の行財政措置を講ずることを望む」としているが、法的措置についてまったく触れていない。行財政的措置を講ずるにしても、その財政根拠を法律によって担保する必要は十分あるのだから、今後、法的措置を含む所要の措置が検討されなければならない。

4、国の責任が不明確なことも重大な問題である。答申では、政府が一体何をやるのかについて具体的にはほとんど述べられていない。一方で、地方公共団体、企業、民間団体の役割を強調していることからすれば、人権教育・啓発の推進の責任を国民に転嫁するものといわざるを得ない。

5.さらに、政府の推進体制の整備について言及がないことも指摘される。人権政策はすべての省庁にまたがる課題であり、その総合調整機能は、内閣府に設置することが妥当である。法務省と文部省に人権教育・啓発の施策を収斂し、従来どおりの取り組みを行うだけでは、わが国の人権政策に展望はない。

6.以上のように、答申は、到底評価できるものではなく、差別の解消と人権確立という国民的課題について、政府のやる気のなさだけが浮き彫りになったといえる。社民党はすでに「21世紀人権政策大網」をとりまとめ政府に対してその具体化を求めているところであるが、今後引き続き、人権教育・啓発を推進する新たな法的措置、人権政策の総合調整機能を内閣府に置くことなどの課題の実現に向けて取り組むものである。さらには、審議会で今後検討される人権侵害の被害救済のあり方についても、行政から独立した第三者機関としての新たな人権救済機関設置を求めていく。