2008年10月30日

公立病院と地域医療を守るための申し入れ

総務大臣
鳩山邦夫 様

社会民主党党首
福島みずほ

 全国的に医師が不足し、産科、小児科など診療科の閉鎖や、病床の縮小、救急医療体制の後退など大きな社会問題になっています。そうした中で公立病院は、地域医療の中核病院として、救命救急医療や、周産期医療、高度先進医療、へき地や不採算医療を提供するなど、地域住民の医療を支える砦となっています。

 さて、総務省は、昨年12月、経営効率を最優先する「公立病院改革ガイドライン」を公表し各自治体に通知しました。このため、各自治体は、経営効率化、再編・ネットワーク化、経営形態の見直しの三つの視点による「公立病院改革プラン」を2008年度内に策定することを求められています。

 しかし、「公立病院改革ガイドライン」は、地域の医療サービス利用者・提供者の意見やニーズ、地域における医療基盤の根幹を支えている公立病院の持続可能性を優先したものとはいえず、自治体財政健全化法とあわせて、公立病院を統廃合や運営形態変更に追い込む内容となっています。

 たしかに、公立病院の3分の2は赤字経営となっていますが、公立病院の経営悪化は、新医師臨床研修制度の導入などによる医師不足、医療機関に支払われる診療報酬の引き下げ、療養病床の大幅削減計画、自治体財政の悪化など、病院事業をめぐる社会環境の変化によるところが大きいといわざるをえません。医師や看護師確保対策など基本的対策を講じることなく、経営改革や再編・ネットワーク化のみを急げば、身近な病院がなくなり、安心して医療をうけることができなくなり、結果として地域医療の崩壊や「医療の貧困」状況に拍車をかけ、住んでいるところによる「命の格差」を拡大させることになりかねません。

 公立病院は、住民の命やくらしを守るためにますます重要になっています。公立病院の厳しい運営状況に追い打ちをかけ、安易な廃止・統合・民間移譲・運営形態変更を容易にするのではなく、公立病院が地域のセーフティネットとして果たす役割をあらためて認識され、地域の医療サービスの確保と医師・看護人材の確保がなされるよう、下記の通り、申し入れます。

1.住民の命やくらしを守る公立病院の役割をきちんと評価し、国として公立病院を守り、地域医療の確保をはかるために必要な支援を行うこと。

2.単に収益の増加や病床利用率の向上を迫れば医師の労働条件が悪化し、さらなる医師不足につながるおそれもあることから、改革に当たっては、効率化最優先ではなく、現場の声をしっかり踏まえ、地域の医療を守り充実させていく立場から取り組むこと。

3.「公立病院改革ガイドライン」を自治体におしつけるのではなく、あくまでも各自治体の意向や住民の要望を尊重すること。

4.「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」においては、関係者からのヒアリングや実態調査など、現状把握を的確に行うようにすること。

5.不採算地区病院、小児医療、救急医療、精神科医療、へき地医療、高度医療、周産期医療等について、地方交付税措置の充実を図り、その所要額を確実に確保すること。市町村合併後の不採算地区病院についても、引き続き所要の財政措置を講じること 。

6.医師、看護師など医療従事者の確保に力を入れて取り組むこと。公立病院勤務医の過重労働改善のために必要な財政措置を講じること。

7.療養病床の取り扱いについては、医療機関の意向を尊重し、医療難民が出ないようにすること。

8.この間の社会保障費をはじめとした歳出削減策は、地域医療の根幹を担う自治体病院の経営を悪化させ、その存続さえも危機に陥らせていることから、社会保障費の削減や医療費抑制政策をやめること。

以上


公立病院と地域医療を守るための申し入れ社民党の福島みずほ党首、重野安正幹事長、日森文尋国対委員長、菅野哲雄自治体委員長、近藤正道常任幹事は10月30日、上記「公立病院と地域医療を守るための申し入れ」を、総務省の倉田総務副大臣に対しおこなった。

 

 

(関連リンク)
声明・談話「産科医療補償制度」の中止に関する申し入れ
政策産声の聞こえる街づくりプロジェクト・身近な地域に安心安全と豊かなお産の場を
政策女性の人生まるごと応援します。あらゆるライフスタイルの女性へ向けた応援プラン