(社会新報2021年9月29日号2面より)
東京・永田町の衆院第1議員会館で14日、アジア太平洋戦争の戦没者遺骨問題について、遺族・市民と国側担当者の間で意見交換会が行なわれた。市民団体と宗教関係者らが共同で開催した。厚生労働省と外務省はオンラインで参加し、防衛省は担当者が来場した。その模様は、オンラインで中継された。
遺骨土砂が米軍基地に
沖縄県名護市辺野古で進む米軍基地建設に伴い、防衛省は沖縄本島南部から埋め立て用土砂を採取する方針を示している。これに対し、「沖縄戦の激戦地だった南部には犠牲者の遺骨が多く残っている」などと反発の声が強まっている。
沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表は、沖縄本島南部の糸満市伊敷で採取した土砂を机の上に広げ、次のように訴えた。
「私たちが遺骨を回収した後の土砂だ。この中にも、小さな人骨がまだ残っている。遺骨を全部収容するのは無理だ。防衛省のやっていることは、戦没者や遺族、国民への裏切りだ」
具志堅さんは土砂の中から細かな骨を取り出し、示して見せた。
出席した防衛省の担当者は、「遺族の問題は大変重要」としながらも、「埋め立てに使用する土砂は、工事の実施段階で受注者において決定する」と説明した。
これに対して具志堅さんは、「自分たちで計画しておいて受注者の責任にしようとするのは、おかしい」と猛抗議した。
参加した社民党の福島みずほ党首も「防衛省の責任だ」などと反発した。
この後、基地建設の埋め立てに沖縄本島南部の土砂を使わないよう求める3万3389筆の署名が、防衛省に提出された。
太平洋地域の遺骨問題についても話し合われた。
対応遅い厚労省に喝
「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会の上田慶司共同代表は、太平洋戦争の戦没者の遺骨収集について、「進んでいない」と国側に苦言を呈した。
厚労省の担当者はオンラインで、太平洋諸地域での遺骨収集とDNA等鑑定の現状について質問に答えた。やはり進展は遅く、成果は少ないようだ。
厚労省は10月1日から「戦没者遺骨のDNA鑑定」の拡大申請受付を開始する。「対象地域を拡大する」と言うが、「遺骨の検体採取済み」が条件だ。
愛知県の安間妙子さんはオンラインで、敗戦の年に潜水艦が撃沈されて戦死した父親について、次のように語った。
「父の乗った潜水艦には、沖縄戦参戦の任務があった。父が戦死したとき、私は生後4ヵ月。私の命があるうちに、父(の遺骨)をこの胸に抱き、ひとりで待つ母の墓に入れてあげたい。遺骨引き上げとDNA鑑定を、ぜひお願いします」
だが、厚労省担当者は、「10月からの申請では、検体が備わっている遺骨について、まず進めたい」と答えた。
韓国の遺族らもオンラインで参加した。父親が「日本兵」として戦死した女性は、「一日も早く父の遺骨を返してほしい」と訴えた。
上田さんは、厚労省の「日本人が先で、韓国人は後から」という姿勢に対し、「ひどい話だ」と批判。
これに対して厚労省担当者は、「韓国の遺族に遺骨を返すとなると、国同士の枠組みが必要だ」と応じた。
外務省アジア大洋州局大洋州課の担当者はオンラインで、「(対応の)基本は厚労省で、外務省は側面支援」との姿勢を強調した。
最後に、日本人戦没者41人と韓国人戦没者11人の遺族らの「戦没者遺族DNA鑑定集団申請名簿」が、厚労省に提出された。