社会新報

【主張】核兵器使用の危機 ~ 唯一の戦争被爆国・日本の役割は重要

(社会新報10月19日号より)

 

 第2次世界大戦後、使用されなかった核兵器が使われるのではないかという懸念が世界に広がっている。
 一つの懸念はロシアの動向である。ウクライナ侵攻開始からすでに8ヵ月が経過しようとしているが、終結の兆しはない。局面打開にロシアは予備役を動員したが、市民の反戦の動きに加え、軍内部からも不満の声が高まっている。
 10月8日早朝、ウクライナ南部クリミア半島とロシアを結ぶクリミア橋で爆発が起きた。ウクライナの治安機関が工作を仕掛け、爆発させたとの疑いもある。
 ロシアのプーチン大統領は、9月21日の演説で「もしわが国の領土保全が脅かされた場合、われわれはロシアと国民を守るために必要可能なすべての兵器システムを必ず使う。これははったりではない」と述べ、核兵器の使用を排除しなかった。小型核の使用が取りざたされているが、万一そうなれば甚大な被害と戦争の拡大、長期化は避けられない。
 いま一つの懸念は北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の動向だ。北朝鮮は4日に飛距離が過去最長4600㌔となる弾道ミサイルを、さらに12日にも2発の巡航ミサイルを発射した。9月末から12日までで7回の発射となる。2017年以来5年ぶりの核実験を行なうのではないかとの観測も流れている。
 北朝鮮の動きの背景に、日本海で米原子力空母も参加した9月末の日米韓の共同訓練をはじめ、この間急速に進む3ヵ国の軍事一体化への反発があることは明らかだ。私たちは軍事的緊張を高める双方の一連の動きに強く抗議する。
 ウクライナ戦争の一日も早い停戦、和平の実現が求められる。北東アジアの平和の実現には米朝シンガポール共同声明(18年)や日朝平壌宣言(02年)の精神に立ち戻ることだ。
 看過できないのは、「敵基地攻撃能力」の保有を求める声が高まっていることだ。政府は年内に「安保関連3文書」を改定しようとしているが、審議状況は明らかにされていない。4日、小野寺五典元防衛相は「政府がまとめる文書にも『反撃能力』について一日も早く明記することが抑止力につながる」と語った。
 唯一の「戦争被爆国」である日本の政府は、今こそ核兵器禁止条約に賛同すべきだ。日本の果たすべき役割は大きい。その真逆の道を歩むのであれば、岸田政権には退陣を求める以外にない。