社会新報

共同テーブル・シンポジウム~「マイナ保険証」はいらない! 共通番号制度の狙いとは?

阿部裕行・多摩市長が講演。国が求める総点検の経緯を語った(9月12日、文京区内)。

基調提案を行なう白石孝さん。約120人が参加した。

 

(社会新報9月27日号3面より)

 

 共同テーブル主催のシンポジウム「『マイナ保険証』はいらない!~徹底解明マイナンバー(共通番号)制度」が12日に東京・文京区で行なわれ、約120人が参加した。

分散型システムを

  プライバシー・アクション代表で共同テーブル発起人の白石孝さんが、マイナンバー制度(メモ)に関する基調提案を行なった。
 白石さんは「政府が目指す方向はマイナンバーカードの全員所持だが、日本はセキュリティ面で決定的に弱い」と指摘し、目指すべき方向性として「分散型を基本にすえ、マイナカードは原則廃止すべき。共通番号については撤回が一番良いが、少なくとも公共部門にとどめ、民間には拡張すべきでない」と語った。
 東京・多摩市の阿部裕行市長は、国から各自治体に対し「マイナンバーに関する総点検」が求められた経緯を語った。具体的には「現状のひも付け方法の確認」だという。
 阿部市長は「マイナ保険証だけでもさまざまな省庁が絡むため、チェック項目が変わってくる」として、「職員は多忙の中で、総点検をせざるを得ない状況に追い込まれている」と実態を語った。
 また、「国が健康保険証を人質に取ってマイナ保険証の取得を推し進め、その責任を地方自治体や健保組合や医療機関に押しつけるのはナンセンス」として、「資格確認証などを発行する手間暇を考えれば、今の健康保険証を継続すればいい」と訴えた。

医療個人情報の危機

  都内で内科医院を開業する東京保険医協会副会長の吉田章さんは、医療現場でマイナ保険証がらみのトラブルが続出する事例を示し、「医療現場は大混乱だ」と語った。
 その上で、「政府は総点検のみで強行する構えだが、今後もヒューマンエラーは解決しないのは明らか。即刻、マイナ保険証の運用を停止し、全体を見直すべきだ」と訴えた。
 政府は、保健・医療・介護の各段階で発生する個人情報やデータを統合・利用する「医療DX」のためにもマイナ保険証は必要と主張する。その情報を集める基盤の一つが「全国医療情報プラットホーム」だ。
 吉田さんは、「医療DX」について「政府はメリットばかり言うが、本当にそうか?」と疑問を呈し、「全ての医療機関に個人情報が知られてしまい、それらは民間企業でも利用されようとしている」と危険性を指摘した。

介護現場の実態無視

 「暮らしネット・えん」代表の小島美里さんは、介護現場でのマイナ保険証の取り扱いについて、「カードにはさまざまな情報が入っていて、恐ろしくて預かれない。現場の人手不足も深刻で対応は無理だ。何のメリットもないので、やめてほしい」と訴えた。
 また、独居の認知症の人や老老介護世帯への対応の難しさも語り、「国は超高齢者時代の現実を全く見ていない」と批判した。
 この他、千葉県佐倉市議会議員の伊藤とし子さんと同鎌ケ谷市の藤代政夫さんから、マイナンバー制度に関する調査・活動報告などもあった。
 日本体育大学教授(憲法学)で共同テーブル発起人の清水雅彦さんは、締めくくりコメントで次のように語った。
 「日本はEU(欧州連合)の一般データ保護規則のようなものを作らず、デジタル独裁・デジタル監視の方向に進んでいる。(表向きは)個人を『自由』に活動させながら、(国や企業は)さまざまな情報を収集し、利用している。警察や検察は捜査関係事項照会書を使い、企業に対し個人情報の提供を求め、企業は安易に応じている。私たちは、いま何が行なわれているかを知る必要がある」

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(メモ)【マイナンバー制度】2015年9月に改正マイナンバー法が成立し、翌月以降、日本に住民票を有する全ての人に12ケタの個人番号(マイナンバー)が通知された。
 翌年から、申請者に対しマイナカードが交付されるようになったが、交付率は低迷を続けた。そのため、国はここ数年、金銭的リターンを利用して攻勢をかけている。
 今年6月2日、マイナカードと健康保険証の一体化(マイナ保険証)やカードの利用範囲拡大などを目指す改正マイナンバー法が成立した。