社会新報

【主張】日本被団協のノーベル平和賞受賞 ~ 石破首相の「核共有」論を許さない

(社会新報10月31日号3面より)

 

 「並外れた努力は、核のタブーの確立に大きく貢献してきた」
 ノルウェーのノーベル賞委員会は11日、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に今年のノーベル平和賞を授与することを決めた理由をこう説明した。核使用禁止の規範の根底が今日のウクライナや中東などの国際情勢の緊迫化で大きく崩れつつあることに警鐘を鳴らしている。
 被団協は、1954年の米国による太平洋ビキニ環礁水爆実験を契機に高揚した原水爆禁止運動を受けて、56年8月に長崎で原爆被害当事者により結成された全国組織だ。
 原爆被害者として核兵器の脅威と非人道性を証言し、国連の軍縮総会などで一貫して核廃絶と被爆の実相を発信し続けてきた。
 高齢化に伴う担い手不足に直面しているが、若い世代に被爆体験を語り継ぐ活動などを継続している。
 核兵器禁止条約は核兵器の開発から使用までを全面禁止する国際条約で、2017年に国連で採択され、21年に発効した。現在、94ヵ国が署名し、73ヵ国が批准している。条約の前文では、広島・長崎の被爆者や世界の核実験被害者が被った苦しみと、核兵器廃絶に向けたこれまでの努力に言及している。
 被団協は同条約が国連で採択される際、300万人の署名を提出するなど、強力に支援した。
 この画期的な国際条約に、唯一の戦争被爆国である日本は、米国などの核保有国の不参加を理由に、署名・批准を拒み続け、批准国のような義務のない「オブザーバー参加」さえも見送り続けている。対米追随の姿勢をあらわにしている。
 看過できないのは、石破茂首相の姿勢だ。首相就任前の9月、石破氏は米保守系シンクタンク「ハドソン研究所」のホームページに論文を寄稿し、米国の核兵器を共同運用する日米「核共有」やアジア版NATO創設を検討する必要性があると主張した。
 被団協の12日の会見で、代表委員の田中煕巳さんが、石破首相と同日電話で会話した内容を報告した。石破首相は「現実的な手段を取っていかざるを得ない」と述べ、核抑止論に基づく考えを述べたという。
 田中さんは首相の「核共有」の考え方を「論外だ。政治のトップが必要だと言っていること自体、怒り心頭」と厳しく批判した。
 首相は「核共有」の危うさも、唯一の戦争被爆国の立場も、理解していない。