(社会新報10月31日号1面より)
今年6月19日、立憲・社民・共産などが反対する中、自民・公明・維新などの賛成で改定地方自治法(メモ)が成立した。
この法改定に対し、「地方自治の形骸化につながる」「国家による一元化の危険がある」などと懸念の声が広がっている。
町内会が行政下請けに
こうした中、共同テーブル主催のシンポジウム「自治・分権を壊し、中央集権国家が誕生する」が10月8日、東京・千代田区の衆院第二議員会館で行なわれた。約80人が参加した。
最初に、東京自治研究センター理事の菅原敏夫さんが今回の地方自治法改定について解説した。
菅原さんは、「前回の1999年大改定によって『これからは国と地方は対等』『国が勝手に指示するようなことはやめよう』という流れになった。だが今回の改定は、そうした地方分権改革をひっくり返すものだ」と批判した。
また、全国におよそ30万ある町内会・自治会の自主・自立の今後について、「町内会・自治会を中心にして指定地域共同活動団体を作り、その周りにさまざまな組織をくっ付けて、『自治体の仕事を頼むよ』ということになりかねない。これまで培った地域の民主的な団体が指定団体の子分になる危険性がある」と訴えた。
「デニーを黙らせろ!」
沖縄で反戦・反基地闘争を続ける「沖縄平和運動センター」顧問の山城博治さんは、現地の現状を次のように語った。
「2021年6月に重要土地利用規制法が成立し、沖縄のほとんどの地域がこの法律に縛られてしまった。これら地域に住む者、出入りする者、土地を持つ者が、取り調べの対象になり得る法律だ」
こうした中で今回、地方自治法が改定された。
山城さんは「地域を縛る土地利用規制法と団体・地方自治体に命令できる改悪地方自治法がセットで来れば、もし発動すればだが、国はやりたい放題にできる」と指摘した。
この状況下で、自衛隊や海上保安庁の利用を円滑にするための「特定利用空港・港湾」指定に沖縄県の玉城デニー知事が反対し続けているため、国の指定がなかなか進まない。
日本政府は、沖縄有事の際は米軍と共同して戦闘する必要があると考える。
こうしたことから、山城さんは改定地方自治法の目的の根幹について、「デニー知事のような〝馬鹿野郎〟を黙らせ、いざ戦争になった時に反対派も黙らせることだ」と訴えた。
中央集権化の危険
東京・多摩市長の阿部裕行さんは、20年に始まったコロナ禍での多摩市の取り組みを紹介した上で、全国の現場で混乱した原因を「政治家がきちんと指示せず、官僚が知恵を使わなかったから」として、「既存の法律で対応できた」と語った。
改定された地方自治法については、「運用次第で地方分権に逆行していく」として、「国が進める中央集権化と憲法が定める地方自治の齟齬(そご)があまりにも大きい」と指摘した。
この他、「大井川の水を守る62万人運動」(静岡県)世話人の村野雪さんがリニア中央新幹線の工事に反対する運動を紹介した。
また、神奈川県大和市議で第5次厚木基地爆音訴訟原告団長の大波修二さんが、米海軍厚木航空基地の問題と住民運動について報告した。
メモ【改定地方自治法】大規模災害や感染症まん延など国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に際し、「国の指示権」を認める特例が盛り込まれた。
また、地域活動を行なう団体を市町村長が指定できるとし、当該団体への支援・調整等に関わる規定を整備するとした。
さらに、情報システムの適正利用やサイバーセキュリティ確保のために国が方針の策定等について「指針を示すこと」も盛り込まれた。