社民党はこのほど、総選挙に臨む重点政策をまとめた。他党との政策的な違いはどこにあるのか。服部良一政審会長が重点政策の特色を解説する。
◇
コロナ感染の広がりによる命と生活の危機が深まっている。しかもそれをもたらしているのが政権の迷走と度重なる失政だ。命と暮らしを守るためには、今こそ政権交代しかないという叫び それが次期衆院選における「生存のための政権交代」だ。
内部留保3年課税
社民党は今回、緊急対策として消費税3年ゼロと生活困窮者への定額給付金10万円をセットで打ち出した。加えて財源問題の解決と税制改革への呼び水として、「大企業の内部留保への3年間の課税」を提案した。くしくも市民連合から、野党の統一政策として「内部留保に課税」を掲げてほしいと要請が来た。法人税を切り下げた結果、たまりにたまった内部留保は、今や日本の年間GDP総額にも匹敵する。国も地方も財政がひっ迫する中、大企業だけに余剰金がたまり続ける、そのひずみにメスを入れなければならない。
コロナ禍で非正規労働者、特に女性に大きなしわ寄せが来ている。「底が抜けた」とまでいわれる今日の社会。政治が果たすべき役割は明確だ。「コロナ禍からの生活再建」「格差・貧困の解消」に全力奮闘。それが社民党である。
今回の重点政策では、立憲民主党の政策との違いも意識した。この間の立憲民主党への合流問題は、まさに社民党を残すのかどうか、残すならば何のために何を実現するために残すのか、社民党に何を期待するのかということを、われわれ党員や、長年支援していただいた多くの方々に問うこととなった。私にとっては、若い時から沖縄の基地問題に関わってきた者として、立憲民主党の「日米同盟を軸に」という綱領に署名捺印(なついん)するわけにはいかなかった。しかし今すぐ実現するわけではないから当選が先だと思った人もいるだろうし、皆さまもさまざまな思いが交錯したことと思う。
政党は、将来どういう社会を実現したいのかという理想を語らなければならない。社民党は何を実現したい政党かということについて、誤ったメッセージを国民・市民に伝えるわけにはいかない。2006年4月に出された「社会民主党宣言」がある。この宣言を原点にしてまとめたのが、今回の重点政策である。
平和友好条約へ転換
一番分かりやすいのが、先に挙げた「日米同盟」である。社民党宣言にはこうある。「現状、明らかに違憲状態にある自衛隊は縮小を図り、国境警備・災害救助・国際協力などの任務別組織に改編・解消して非武装の日本を目指します。また日米安全保障条約は、最終的に平和友好条約へと転換させ、在日米軍基地の整理・縮小・撤去を進めます」。
今回の重点政策では③「地球環境と人間の共生」の5番目の項に「防災・減災に向けたインフラ整備をすすめ、自衛隊組織の一部を災害救助隊に改編します」とした。自衛隊に災害救助を期待する世論は実に8割に上っている。さらに⑥「対話外交で非核平和地帯」の第5番目では「軍事同盟基軸でなく対等・平等な日米平和友好条約へ転換します」とした。他にも、環境との共生、ジェンダー平等、多様性社会の実現など、日本の未来像を堂々と訴えていこうではないか。