(社会新報2021年12月22日号3面【主張】より)
12月6日から始まった臨時国会が21日に閉幕する。わずか16日間の会期ではあるが、6月に閉会した通常国会以来、約半年ぶりの本格的な国会論戦となった。
十分な説明もないまま五輪・パラリンピックを強行し、新型コロナ感染への無為無策によって多くの人命を失わせながら、憲法53条に基づく野党の臨時国会召集の要求にも応じず、政権維持のための党内政治に終始してきた与党の責任は重大だ。国会論戦を通じて、岸田首相の姿勢を厳しく問いただしていきたい。
臨時国会の主な争点は補正予算案だ。「新型コロナの感染拡大防止」「社会経済活動の再開と次の危機への備え」「新しい資本主義の起動」「防災・減災など安全・安心の確保」の4つを柱として、総額36兆円に及ぶ過去最大規模の補正予算案となっている。コロナ禍という未曾有の状況であるとはいえ、果たしてこのような巨額な補正が本当に必要なのか、その中身は十分に検証されなくてはならない。
特に、「安全・安心」と称して7738億円が盛り込まれた防衛費には注意が必要だ。22年度当初予算の概算要求に盛り込まれている装備品調達費を前倒し計上するなどして、18年度の補正4545億円を超える過去最高額となっている。21年度当初予算の5兆3422億円と合わせると前年度比7%増の6兆1160億円に及ぶ。防衛予算の総額が6兆円を超えるのは初めてであり、岸田政権の防衛力偏重の姿勢は明確だ。
それでなくとも、毎年巨額の補正を組み、総予算をふくらます手法が恒例化している実態には問題が多い。財政法が、補正予算を当初予算編成以降の緊急性を要件していることからも許されることではない。スタンド・オフ・ミサイル(脅威圏外から攻撃するミサイル)や哨戒機、輸送機の取得、南西地域の防衛力強化が「特に緊要となった経費」とはいえないだろう。「安全保障環境の悪化」はいま急に始まったことではないからだ。沖縄県が埋め立て計画の変更を不承認とした中で、辺野古新基地建設経費801億円が盛り込まれていることも、到底容認できない。
防衛費増額の背景に、同盟国に軍事費をGDP比2%以上への増額を求める米国への忖度(そんたく)があることは間違いない。自民党内のハト派(リベラル)を自認してきた岸田首相の下で進んでいる、防衛費の歯止めなき膨張に警戒が必要だ。
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