(社会新報2022年4月27日号3面【主張】より)
「今、一番、労働者の先頭に立って経営者に向けて『給料を上げろ、労働分配率を増やすべきだ』と言っているのは自民党だ」
4月17日、麻生太郎氏は、福岡市内で開かれた会合でこう発言した。
「自民党内で労働組合について説得するのは大変だったが、われわれとも食事をして酒を飲もうというところまできた」と連合との蜜月ぶりをアピールした。労働者も労働組合もずいぶんなめられたものだ。
自民党は3月に開催された党大会で、「連合など労働組合との政策懇談を積極的に進める」との方針を決定し、4月18日の自民党会合には、連合の芳野友子会長が出席した。言うまでもなく連合は、立憲民主党、国民民主党の支持母体であり、社民党も連合傘下の単組に支援を受けてきた経緯がある。芳野会長に代わってからというもの、急速に自民党との距離を縮めているように見える。自民党との会合に連合が出席するのは異例だ。「ぜひ自民党にも力を貸してほしい」とお願いをし、「これから政策実現に一緒に取り組みたい」と話したと言うが、お願いの前に、これまで自民党が行なった労働法制改悪の責任を追及するのが、ナショナルセンターの仕事ではないだろうか。
分割・民営化により、国鉄労働組合を解体に追い込み、それが引き金となって総評も解体、連合が結成された。国労つぶしは国策だった。2000年代に入ると小泉構造改革の名の下、郵政民営化に労働者派遣法の規制緩和。非正規労働者は増え続け、今や労働者の約4割が非正規労働者。ロスジェネ問題は放置。最近では「多様な働き方」という触れ込みで、雇用によらない働き方を増やし続けている。実質賃金は20年以上も上がらず、男女の賃金格差も埋まらない。大反対を押し切って高度プロフェッショナル制度を導入し、搾取と人権侵害の温床である外国人技能実習制度は見直すこともなく、受け入れ拡大。またも、解雇の金銭解決制度導入をもくろんでいる。これら先頭に立って雇用破壊を行ってきた自民党に、「労働者の先頭に立って」などと言われることの、なんと情けないことか。
自民党の狙いは、野党第一党である立憲民主党に揺さぶりをかけ、野党共闘に亀裂を生じさせることだ。連合は、そこに手を貸すのだろうか。先頭を歩くのは労働者自身であり、生まれながらの経営者の申し子・麻生氏ではない。
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