社会新報

核も戦争もない世界を求める 被爆76周年原水禁世界大会が開かれる

被爆76周年原水爆禁止世界大会の福島大会が7月31日に、広島大会が5、6の両日に、長崎大会が8、9の両日に、それぞれ開催された。新型コロナウイルスの感染拡大状況の下、広島では昨年に続いてオンライン開催となった。原水爆禁止日本国民会議(原水禁)などの実行委員会が主催した。(福島大会は8面に掲載。国際シンポジウムと広島・長崎の分科会報告は次号4・5面に掲載予定)

広島大会
日本の核禁条約 批准を強く迫る

 初日の5日午前、広島市内で広島大会の開会総会が開かれた。第21代高校生平和大使の開原弓喜さんが総会の司会を務め、1分間の黙とうの後、金子哲夫共同実行委員長が主催者を代表してあいさつした。
 金子委員長は、今年1月に発効した核兵器禁止条約に関し、「この条約は、非人道兵器である核兵器を明確に違法な兵器とし、核兵器のあらゆる活動を禁止するという画期的なものだ」と強調し、「被爆者の真の救済は核兵器廃絶しかない。被爆者に残された時間はあとわずかだ。一人でも多くの被爆者が生きていてよかったと言えるように核兵器廃絶に向けて新たな一歩を踏み出そう。日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を早期に行なうよう強く求める」と訴えた。
 続いて、被爆者の訴えとして広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之理事長代行が「被爆者が生きているうちに核兵器をなくしてください。それが、いま生きている被爆者の訴えです」と語った。
 そして北村智之大会事務局長が基調提起で「私たちは核抑止力という欺まんを許さず、日本政府に核の傘からの離脱を求めるとともに、核兵器禁止条約の署名・批准を引き続き強く迫る」と述べた。北村事務局長は5年に1度開かれるNPT(核不拡散条約)再検討会議がコロナウイルス感染拡大の影響で2022年1月に再々延期となっている状況に懸念を示した上で、「唯一の戦争被爆国・日本が核保有国と非保有国の間に立って対立の解消の取り組みを提起しなければならない」と訴えた。最後の閉会あいさつは、広島県実行委員会佐古正明事務局長が行なった。午後からは4つの分科会が開催された。翌6日には2つの国際シンポジウムが開かれ、また「未来ある子どもたちに『核も戦争もない平和な社会』を届ける取り組みを全力で進めよう」とする「ヒロシマ・アピール」を採択し、長崎大会へ引き継いだ。

 

オンライン開催の広島大会であいさつする金子共同議長

オンライン開催の広島大会であいさつする金子共同議長

 

長崎大会
黒い雨勝訴確定 長崎でも救済を

 長崎市で8月8日、「被爆76周年原水爆禁止世界大会・長崎大会」が開催された。この1月の核兵器禁止条約発効、7月の広島高裁における「黒い雨」訴訟の原告勝訴確定から初めての長崎での開催となった同大会では、「核も戦争もない平和な世界」実現に向けた参加者の熱意がみなぎった。
 大会の冒頭、広島・長崎の原爆犠牲者をはじめ、世界の戦争や核実験で亡くなった人々に対して黙とうを捧げた後、主催者を代表して長崎大会実行委員会の川野浩一共同実行委員長があいさつした。自身も長崎での原爆投下を体験した川野委員長は、「核兵器禁止条約発効によって、世界の核兵器廃絶を求める運動は大きく前進した」と評価。一方で、唯一の戦争被爆国である日本の政府が同条約に背を向けていることには「多くの国から失望の声が上がっている」と指摘し、来年1月にウィーンで開催予定の第1回同条約締約国会議に日本が出席するよう求めた。
 さらに世界の核弾頭数が今日も増加傾向にあり、米国の「原子力科学者会報」が核戦争などによる終末までの残りの時間を発表する「終末時計」も、最も危機的な段階に達している現状を説明しながら、あらためて76年前の被爆体験を思い起こし、原水禁の運動を前進させようと訴えた。
 続いて被爆者の立場から登壇した「被爆体験者訴訟第2陣」の山内武会長は、長崎原爆の爆心地から半径12㌔圏以外の住民が被爆しても被爆者健康手帳が交付されないことを不当として長崎県や長崎市に交付を求めて訴訟を起こした訴訟が、第1陣、第2陣とも最高裁で敗訴が確定した経過を説明。さらに「被爆して脱毛や下痢、歯ぐきからの出血があったのに、地域で差別するのは許されない」として、被爆者の平均年齢が84歳と高齢化が進む中、「黒い雨」訴訟に続いて政府が被爆者としての認定を急ぐよう強く求めた。
 大会では9日に、恒例の「ナガサキアピール」を採択。「被爆者の悲願である核廃絶と被爆2・3世も含めた被爆者救済を一刻も早く実現しなければならない」と訴えた。また核兵器禁止条約について触れ、政府に対して「核の傘」と称した核抑止論から脱却するとともに、「唯一の戦争被爆国と口にするなら、一刻も早く核兵器禁止条約を批准し核兵器廃絶のため行動すべきである」として、外交政策の転換を強く求めた。
 最後に「アピール」は、「核のない世界は、被爆地ナガサキをはじめ人類の悲願である。これからも核廃絶への道は続く。共に歩き、共に闘おう」と呼びかけた。

 

 
社会新報のお申込はこちら