社会新報

【主張】医療崩壊の現実 こんなに命が軽んじられていいのか

(社会新報2021年9月8日号3面《主張》より)

新型コロナウイルスの感染は東京五輪の開催に呼応するかのように、爆発的ともいえる拡大を見せた。全国47都道府県の半分以上に当たる29都道府県に「緊急事態宣言」もしくは「まん延防止等重点措置」が発令されている。9月12日が期限となっているが、田村憲久厚労相も認めるように、この日までに解除される可能性は極めて低い。

「医療崩壊」の可能性は以前から指摘されていたが、政府は抜本的な対策をとろうとしなかった。今やそれは現実のものとなってしまった。

ところが、菅政権は先月4日、新型コロナウイルスの感染者が急増する地域で入院を制限し、重症化リスクの高い人以外は自宅療養とするという新しい方針を打ち出した。さらに25日の会見では「明かりははっきりと見え始めた」と現実無視の発言までした。

こうした動きに地域の住民と身近に接する自治体議員は危機感を募らせ、先月31日、田村厚労相宛てに要望書を提出した。緊急な取り組みだったが、306人の自治体議員が賛同した(呼びかけ人は山田厚甲府市議)。

要望書は「『自宅療養』では、医療対応どころか、食生活などの対応も出来ず、患者の『放置』『見放し』となります。これでは患者の命を守れません。それだけではなく、感染症の『放置』となり、家庭内感染と地域感染をも広げます」と厳しく批判。ホールなどに臨時病院を設置することなどを求めた。

地方の声を国の政策に反映させなければならない。ところが政府・与党は、憲法53条に規定されているにもかかわらず野党の国会開会要求をかたくなに拒んでいる。そうであるならば、総選挙で菅政権を退陣に追い込み、政権交代を実現するしかない。

福島みずほ社民党党首も先月28日の「共同テーブル」(発起人は評論家の佐高信さんら26人)のキックオフ集会であいさつし、「こんなに命が軽んじられていいのか」と怒りをあらわにし、来たる衆院選勝利への決意を述べた。

先月22日に投開票された横浜市長選で、社民党も支援した元横浜市立大学教授の山中竹春さんが対立候補を大差で破り、圧勝したことからも民意は明らかだ。

その民意を国政に反映するためにも総選挙に向けた立憲野党間の協議を早急に進めなければならない。残された時間は限られている。社民党はその実現に全力を挙げる。