社会新報

【主張】ロシアの情報統制~ウクライナ侵攻と報道弾圧を許さない~

(社会新報2022年3月16日号3面【主張】より)

 

 情報統制を強めたスターリン時代の旧ソ連に回帰してしまうのか。

 ロシアのプーチン大統領は3月4日、ウクライナへの侵攻をめぐる戦況でのロシア軍に関して、「偽情報」を広めた場合には最長で禁錮15年の刑罰を科すなどとする改正刑法案に署名し、同法が成立した。

 ロシア当局はフェイスブックやツイッターなどのSNSに国内から接続できないよう遮断した。国内の反戦世論を封じ込め、情報統制を徹底する狙いがある。

 英BBCや米CNN、ブルームバーグ通信などの欧米のメディアは、記者拘束のリスクを避けるため、ロシアでの報道活動を停止。

 ロシア当局はウクライナ侵攻を「特別軍事作戦」と称し、「戦争」や「侵攻」という表現を「偽情報」だと主張する。全くのわい曲だ。

 世界の言論弾圧への監視を続ける国際NGO「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ、本部は米ニューヨーク)は6日までに声明を発表し、プーチン大統領について「ロシアを情報の暗黒時代に追いやった」と厳しく非難した。

 報道の自由は民主主義の基本だ。戦時下では、メディアが市民に事実を伝えなければ、軍部の暴走を止められない。

 プーチン大統領はこれまでも、政権に批判的な野党や報道機関を厳しく規制してきた。ウクライナ侵攻後は報道弾圧を強め、独立系のラジオ局とテレビ局を閉鎖した。独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」は、ウクライナ侵攻に関する記事をサイトから削除した。同紙の編集長は、2021年にノーベル平和賞を受賞したドミトリー・ムラトフさんだ。記者が刑務所送りになるのを回避するための苦渋の選択とみられる。

 ロシアの情報統制は、日本にとって決して対岸の火事ではない。第2次世界大戦下の日本も同じ厳しい情報統制がみられた。各紙が大本営発表を無批判に垂れ流し続け、ファシズムと無謀な戦争へ至らしめた。

 反骨のジャーナリスト・むのたけじさんは生前こう指摘した。「戦争が始まってしまってからでは、新聞も政党も思想団体もまったく無力。国家は自分に反対するものは全部吹っ飛ばしてしまいます。抵抗できません。戦争と戦うのであれば、戦争を起こさせないことです」。戦争と報道弾圧は常に表裏一体で進む。

 社会民主党は、ロシアの情報統制に厳重に抗議するとともに、ウクライナからの即時撤退を訴える。

 

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