(社会新報2021年5月19日号3面《主張》より)
5月6日の衆院憲法審査会で憲法改正の手続き法である国民投票法の改正案が修正のうえ採決で可決された。
同改正案は自民党、公明党、日本維新の会などが2018年に提出したもので、立憲民主党は同改正案に修正を加えた上、採決で賛成に回った。国民民主党も賛成した。
社民党は同日、採決強行に関して「改憲論議に結びつけようとしているにすぎない」と厳しく抗議する声明を発表した。
同改正案は野党側の努力により8度の国会にわたり継続審議となってきたもので、内容は16年の改正公職選挙法改正に合わせて、駅や商業施設に投票所を設置することや期日前投票の時間を柔軟に設定することなど7項目から構成される。
その本質は、今年の憲法記念日に菅首相が「憲法改正の議論を進める最初の一歩」と露骨に表現したように、改憲を促進する呼び水ともいえるものだ。
立憲民主党は、施行後3年をめどに広告放送制限などの措置を施すとする附則を盛り込むよう自民党に提案し、自民党が受け入れ、合意に至った。しかし、この附則には肝心のテレビやネット上のCM規制の具体策は盛り込まれず、先送りされた。
今回、可決された改正法案では、資金力による広告量への影響問題や最低投票率問題などは放置されたままで、欠陥だらけだ。
立憲民主党が提案した修正案は、法案の本則ではなく附則4条において、冒頭に「検討」と付し、「国は、この法律の施行後3年を目途に、次に掲げる事項について検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする」と記し、広告放送(CM)の制限や国民投票運動の資金規制など数項目を列挙する。ところが肝心のCMをどのように規制するのか、その中身が全く入っていない。
手続法の改正を突破口に、9条への自衛隊明記や緊急事態条項創設などの自民党「改憲4項目」の議論に入ることを許してはならない。9条への自衛隊明記は戦争国家への道であり、緊急事態条項は内閣の政令が国会の法律に優先する、火事場泥棒のような国会無能論だ。
国民投票法改正案は5月11日の衆院本会議で可決され、参院に送付された。
社民党など立憲野党と労組と市民は、院内外の闘いを結集して、参院段階で同改正案の欠陥を徹底的に追及し、廃案に追い込まなければならない。