「安倍政治」の罪と「安倍国葬」の闇 ~ 総がかり実行委などが秋の闘いへキックオフ集会
(社会新報9月7日号3面より)
9月27日に予定される安倍晋三元首相の「国葬儀」が近づくにつれ、疑問と反発の声が強まっている。
こうした中、「2022年秋のたたかいキックオフ集会」が8月22日、東京・千代田区の連合会館で行なわれた。主催は、全国市民アクション・総がかり行動実行委員会。オンラインを含め100人以上が参加した。
「安倍国葬」の暴挙
最初に、明治大学の山田朗教授(日本近現代史)が「国葬」に関する講演を行なった。
戦前、国葬が行なわれたのは20人で、皇族や旧薩摩・長州藩関係者が中心だった。
国葬令は1926年に制定され、47年末に廃止された。だが67年、吉田茂元首相の死去に伴い、「国葬儀」と名称を変えて強行された。戦後では唯一。
山田さんは、こうした歴史を解説した上で、「吉田茂元首相の死去当時も、『国葬儀は憲法違反』と批判された。法的根拠がなく、立憲主義に反している」と指摘した。
岸田文雄首相は7月14日、安倍元首相の国葬儀を行なう旨を発表した。その理由として、安倍氏が「憲政史上最長の8年8ヵ月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって」首相を務め、「その御功績は誠にすばらしいもの」であることなどを挙げた。
これに対し、山田さんは次のように批判した。
「本当にそうか。内実が問われている。安倍氏は、立憲主義と民主主義を破壊した。国葬儀によって、安倍元首相は顕彰・偉人化され、『安倍政治』があたかも良かったかのように誘導されかねない」
「安倍政治」の害毒
次に、山口二郎法政大学教授(政治学)が、「安倍政治を超えて」と題する講演を行なった。
山口さんは、「安倍政権下の政治」について、次のように語った。
「多数決は民主主義を構成するものの一つにすぎないのに、『多数決=民主主義』という考え方を全面展開した。その結果、議論をすっ飛ばし、うそをつき、国会での質問に対して関係ないことで押し通した。法の支配も立憲主義も、全部そぎ落とした。森友・加計問題への対応が、その典型だ」
また次のようにも訴えた。
「安倍政権では『多数の専制』が進行した。自由主義の本質は、多数から支持された権力でも間違う場合があることを前提とする。だから、多数とは違う論理が組み込まれる。安倍政権は、そうしたチェックシステムをことごとく弱体化し、解体した。安保法制(の制定前後)の時に見たとおりだ」
山口さんは最後に、野党に対しても苦言を呈した。
「野党共闘を語る以前に、それぞれの野党が反省して立て直さないと、今の(状態の)野党で『共闘』と言っても、政治を変える担い手みたいなものが出てくるとは思えない。『どういう社会をつくりたいか』『どういう政策で合意するのか』など、地道な議論が必要だ」