社会新報

コロナ禍で見えた自助のもろさ-反貧困ネットワーク事務局長瀬戸大作さんに福島党首が聞く

(社会新報2021年3月24日号1面より)

 

福島みずほ党首は2月25日、ユーチューブ公式チャンネルの配信企画「教えてプリーズ‼」の第2回として、反貧困ネットワーク事務局長の瀬戸大作さんを迎えて「コロナ禍で見えた自助・自己責任の脆(もろ)さ」のテーマで話を聞いた。瀬戸さんの報告からは、解雇され住居を失うなど、コロナ禍で底が抜けた社会の深刻な状況と問題点が見えてきた。

 

 

福島みずほ社民党党首 毎日身を粉にして働いていますね。

瀬戸大作反貧困ネットワーク事務局長 今日もこれが終わった後、池袋に行く。所持金740円という青年からSOSが入った。

福島 番組の後、夜遅くに駆け出す。コロナ禍の1年で貧困と格差のすさまじい現実が見えてきている。

瀬戸 年が明けてから、家賃未払いで住まいを追い出される人が続出している。その多くが、まさか自分がこういう形で貧困に陥るとは思わなかったと。完全に底が抜けた状態。昨年春はネットカフェが閉まり、そこにいた人が路上に出てきた。だけど今は、家族でホームレスになるなど、幅が広がっているし、内容も深刻。僕らがSOSに対応して生活保護の申請に同行し、アパートを確保するだけでは済まず、精神的医療につながないといけないような案件も非常に増えていると思う。飲食業界の閉店などの影響が増えている。6ヵ月間、家賃が払えていないとか、給付金が利用できていない、会社の寮から追い出される、そういう現象も非常に顕著に出ている。

福島 リーマンショックのときは製造業などの単身男性が多かった。今回は関係する職種が広範囲で、女性も多い。

 

非正規・女性を直撃

瀬戸 今日も女性の相談を受けた。職場で仕事を休んでくれと言われ、精神的に追い詰められ、収入もなくなっている。非正規の人たちから雇い止めが起き、女性を直撃している。

福島 見た目では貧困状態と分からない人も多い。友だちにも言えず、弱音を吐けない。

瀬戸 もう一つは家族。親との関係が難しかったり、親も経済的に苦しかったりして頼れない。菅首相が自助共助や家族の話をしたけれど、もうとっくに機能していないというのが実感だ。

福島 困っても生活保護を受けたくない人が多い。

瀬戸 みんな「自分が悪い、だからもらうのは申し訳ない」と言う。生活保護は、利用と引き換えに何かを捨ててしまう制度。たとえば車とか、自分がかけてきた生命保険を解約するとか。申請のときは、自分の経歴を話して全部調査されて、取り調べを受けているよう。自己肯定感やプライドを一定程度崩すことになる。もっと簡単に、具体的な現金給付が一定の期間受けられるとか、厳しい時は家賃補助が受けられるとか、そんな仕組みにしていった方がいいのではないか。

福島 生活保護法ではなく生活支援法にして、足りない部分を支援するというふうにすべき。生活保護の資産要件で車を持ってはいけないというのは、なんと1963年の通知。住宅ローンもダメ。丸裸状態にならないともらえない。無料低額宿泊所に行かないといけない自治体もある。

 

生活保護費ピンハネ

瀬戸 無料低額宿泊所などの施設に入れられると、生活保護費をピンハネされ、手元に2万円くらいしか残らないとか、そこの仕事をさせて自立できなくなるところもある。それがイヤで失踪する人も多い。入所して尊厳がガタガタに傷つき、精神的にもっと悪い状態で失踪するという悪循環になれば、良い効果は得られない。関東以外では県営住宅に入ってくださいという自治体もある。議論して政策変更をしていく必要がある。
モデルになるような自治体もあるが、生活保護だけ出して、アパート探しやアフターフォローは僕らがまるごとやらなければならない自治体もある。また、生活保護の申請が通るまでは現金給付などないから、つなぎの宿泊費や生活費は反貧困ネットワークの基金からお渡ししている。10代の子たちが夜以降に駆け込めるところがあればもっと救われるはずだが、児童相談所は夕方までしかやっていない。緊急事態宣言下で、夜8時以降に新宿や池袋の駅周辺で座っているのは、野宿している人たちが多い。警察や行政、民間の人たちが、しっかり声をかけてフォローするようなアウトリーチが必要だ。

福島 瀬戸さんたちの活動がなければここまで見えなかったかもしれない。答えは現場にある。たくさんの人たちと状況を変えたいですよね。

 

無料低額宿泊所

生活保護を受ける人を住まわせる定額の宿泊所。1990年代から急増。開設する事業者によっては、劣悪な住環境で生活保護費を搾取する「貧困ビジネス」の被害ケースが多くみられる。超党派の東京・三多摩の自治体議員らのアンケート調査によれば、入所者全員を個室利用にしている自治体は2市のみで、入所者のプライバシー確保の問題が指摘されている。

 

■せと・だいさく 1962年生まれ。反貧困ネットワークの事務局長。昨年、新型コロナ災害緊急アクションを設立。原発事故避難者相談支援の「避難の協同センター」も設立し事務局長を担う。パルシステム生活協同組合職員。