社会新報

コロナ禍で福祉が「底抜け」-社民党が困窮者支援の現場を行く-

(社会新報2021年7月7日号1面より)

 

6月17日、瀬戸大作さん(反貧困ネットワーク事務局長)の案内で、福島みずほ党首ら社民党のメンバー7人が都内の困窮者支援の現場を訪ねた。

最初に訪れたのは、台東区日本堤、日雇い労働者の街だった山谷の「泪橋(なみだばし)ホール」。懐かしの名画を上映する映画喫茶だ。切り盛りする多田裕美子さんは、写真とエッセーでつづる『山谷 ヤマの男』の著者でもある。

 

「泪橋ホール」を訪れ

まずは、瀬戸さんが現状を説明した。

「最近のSOSは20代が大半。コロナ禍1年が過ぎ、もともと、さまざまな困難を抱えていた若者の困窮は底が抜けた。救い上げる私たち民間の支援と、困窮化に対応できない行政との距離が開いている。例えば、生活保護では一時的な住まいとしてビジネスホテルを利用できるが、東京23区でも大半は本人の意思と関係なく無料定額宿泊所に誘導している。受け入れなければ野宿だ。住まいは自立の基盤。アパート入居までの通過型シェルターの確保、公営住宅や空き屋の活用など、住宅弱者への公的支援拡充は急務だ」

福祉行政の立ち遅れについて、反貧困ネットで女性支援に携わる藍野美佳さんは、行政間の連携不足を指摘。「ある女性は、行政が提供するホテル滞在の1ヵ月間、まともな聞き取りもなく、結局、ケースワーカーとトラブってパニックになった。福祉事務所と同じ所に婦人相談がある。そこのスキルを使えば、彼女も傷つかないで済んだはず」

「生活保護と社会福祉協議会も切れている。困窮者には家計管理の難しい人がいる。社協には家計管理を支援するサービスがあり、それを使えば自分でお金を管理し、貯金もできる。自立の一歩となるサービスが生かされていない」

カトリックの修道女で山谷での生活支援30年、「ほしのいえ」の中村訓子さんが強調するのは、生活保護本来の目的と、現実とのギャップ。一人ひとりの事情や意向は無視し、「働きなさい」で終わってしまうケースワーカーのおざなりな面接。利用者から通帳・印鑑を取り上げ、生活保護費を収奪する悪質無料低額宿泊所と、これを放置し、むしろ依存する行政。「必要な支援を相談するのが生活保護、福祉の役割ではないのか」と怒りを込める。

そんな問題山積の公的支援からもはじかれているのが、日本に住む外国人だ。反貧困ネット・外国人支援チームリーダーの原文次郎さんによると、増えているのは、「在留資格を失い、入管から仮放免の処分を受けている人」。就労できず収入がない。しかも、住居から食料や医療、すべての生存条件が公的に保障されないから、民間の支援無しには生きられない。原さんは、「私たちも懸命に支えているが、この先どうしようかと正直悩む」と漏らす。

 

「責任は政治にある」

こうした状況について瀬戸さんは、「責任は政治にある」とズバリ。「私たちにSOSが届いた人を助けても、根本的な解決にはならない。政治が介入しなければ事態は変わらない」。

泪橋ホールでの交流を終えると、一行は近くのシェルターを見学。外見と違い、内部は奥行きが広く、居室・共有スペースとも簡素だが居心地はよさそう。全9室のうち空きは1室。そこも、近く外国人の入居で埋まるという。

続いて、「企業組合あうん」がある荒川区東日暮里へ。「あうん」は、2002年に野宿者・失業者などが生きがいと誇りのある働き方の実現を目指しスタートさせたものだ。見渡せるエリアに、リサイクルショップや「どっこい食堂」を展開、提携するフードバンク「あじいる」もある。代表理事の荒川茂子さんに話しを聞いた。

 

ここがあるからこそ

「ホームレスというと、怠け者とか、汚いとかの偏見がある。でも、ふだん働く姿を見ているうちに偏見が取れ、名前や人格のある地域の仲間、隣人になっていく」

「給料は全員同じ時給1250円。大手との競争もある中、それだけの人件費を確保するのは大変。だけど、ここがあるからこそ、ぜいたくは無理だが、住まいがあり、ちょっとは遊べるぐらいの生活はできる。今後も、そこを目指してやっていく」

意見交換をはさみ、福島党首が「今日、困窮者支援の最前線で頑張る方々のナマの声を聞き、『答えは現場にある』ことをあらためて実感した。共有した課題を全力で政治に反映させる」と、この日の濃密な交流を締めくくった。

 

 
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