社会新報

【主張】北京五輪外交ボイコット-日米に人権を主張する資格あるのか-

(社会新報2022年1月12日号3面【主張】より)

 

2月4日から20日まで、中国の北京で第24回冬季五輪が開催される。

これに対して、米国が「新疆で進行中の大量虐殺と人類に対する犯罪や他の人権侵害」を理由に「外交ボイコット」を決定した。これに英国とオーストラリア、カナダ、リトアニアが同調し、ニュージーランドもコロナを理由に閣僚級を派遣しないと発表した。

岸田文雄首相も昨年12月24日、「自由、基本的人権の尊重、法の支配、こうした普遍的価値が中国でも保障されることが重要だ」として、政府関係者の派遣を見送ると表明したが、海外では「外交ボイコット」と受け止められている。

だが国連人権差別撤廃委員会は2018年、日本に対し、①ヘイトスピーチの規制②朝鮮学校に対する支援金差別の是正③日本軍「慰安婦」問題の被害者中心アプローチによる解決等の12項目を勧告している。その多くは2000年代初めから勧告されているが、今も進展はないに等しい。

昨年3月には名古屋入管の収容施設で、スリランカ人女性が医療措置を拒否されて衰弱死するという事件も起きており、日本の「人権後進国」ぶりを示す例は事欠かない。

にもかかわらず、なぜ唐突に「基本的人権の尊重」が「外交ボイコット」の理由にされるのか。

考えられるのは、米国への追随だろう。

だが、米国に人権を説く資格があるだろうか。米国は03年に国際法を無視して、今回同調した英国とオーストラリアを加えてイラクに侵略し、数十万人の非戦闘員を殺害した。

しかも米国は人権が存在しない同盟国のサウジアラビアに多額の武器を売りつけ、サウジの空爆と封鎖がもたらすイエメンでの飢餓をはじめとした深刻な人道危機に加担している。

多数の国際人権団体が非難するパレスチナ人への迫害と暴力を止めないイスラエルを全面支援しているのも、米国だ。

にもかかわらず米国が気に入らない他国に対し、人権を口実に使って攻撃するのは、何らかの政治的打算があるからだ。今回も、トランプ前政権から続く中国の国際的孤立化政策と、軍事・経済両面からの圧力強化を補完するための一環だろう。

各国内の人権問題は、米国のような国の非難で改善しない。のみならず人権を政治的手段としか見ていない国への同調は、国際平和にとっても障害でしかない。

 

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