社会新報

【主張】大阪・カジノ誘致 賭博で金もうけ~それが公共事業か~

(社会新報2022年2月2日号3面【主張】より)

 

 大阪市では、2025年に開催される関西万博の跡地にカジノを誘致する計画が進められている。吉村大阪府知事と松井大阪市長は、カジノを誘致するための「区域整備計画案」を、この2月府議会・市議会で議決し、4月28日までに国に提出するとしている。

 誘致する場所は大阪湾にある人工島・夢洲。汚染土壌の捨て場所だった。先日、区域整備計画案に関わって、土壌汚染対策、液状化対策などが必要になり、大阪市の負担は約790億円になるとの試算が示された。夢洲は軟弱地盤で、高層ビルを建築する場合、50㍍の杭(くい)が必要になる。南海トラフ巨大地震が起きれば、津波や大規模な液状化現象の発生が想定されている。四方を海に囲まれた人工島から、どうやって人々を避難させるのか。吉村知事は阪神淡路大震災から27年目の今年1月17日、SNSで「南海トラフ巨大地震は、30年以内に70%の確率で起きるとされてます。大震災への備え、シミュレーションをお願いします」と発信していたが、シミュレーションするべきなのは吉村知事だろう。いくら金をかけても安全性を担保できず、開発の度に金が飛んでいく。それが夢洲だ。

 コロナ禍でインバウンド需要も先が見えず、カジノ誘致に名乗りを上げたのは、米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの共同グループ1社のみ。新設される「夢洲駅」(仮称)の周辺開発に応募する事業者は1社もなかった。これは、「もうからない」と判断されたと理解すべきだ。その結果、夢洲駅の周辺整備は大阪市が負担することに。その額約30億円。吉村知事・松井市長は、「カジノに税金は一切使いません」と言っていたが、虚偽だった。大阪市民の税金は維新のATMではない。カジノで得られる年間収益は4200億円だとうたうが、その試算もずさんなものだ。そもそも、賭博で金もうけをするカジノを公共事業として行なうこと自体、自治体としての倫理観を欠いている。

 1月18日、大阪市議会の自民党市議団が「IRの誘致について市民に賛否を問う住民投票」を実施するための条例案を2月議会に提出する考えを明らかにした。全国的に社会インフラの老朽化が問題になっている今、新たな箱モノを造り、大型開発に公金を費やす余裕はない。命や暮らしより、金もうけを優先する時代遅れな政治には反対の声を突きつけるしかない。

 

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