(社会新報2021年9月1日号1面より)
「米国に加担し、南西諸島・沖縄を再び戦場にするようなことがあってはならない」。社民党の服部良一幹事長は「誓いの言葉」の中で、菅政権の安保防衛政策を厳しく批判した。
敗戦から76周年を迎えた8月15日、「戦争犠牲者追悼平和を誓う8・15集会」が東京・千代田区の千鳥ヶ淵戦没者墓苑で開かれ、無名戦没者の遺骨を納めた六角堂の前に約150人が参列した。フォーラム平和・人権・環境が主催し、アジア・太平洋で戦争被害を受けた人々との和解と共生を目指して、非戦の誓いを新たにした。
服部幹事長は、「今や先制的敵基地攻撃論まで持ち出してきている。侵略的武器を米国から爆買いし、かつて自民党政府自身が言ってきた専守防衛をなし崩しにするもので、到底許されない」と厳しく指摘した。
また、服部幹事長は防衛省が米軍辺野古新基地建設の埋め立てに遺骨の混じった沖縄本島南部の土砂を使用しようとしていることに対して、「戦没者を冒とくする行為だ」と厳しく批判した上で、土砂採取の即時中止を求めた。
集会の冒頭、主催者を代表して、フォーラム平和・人権・環境の藤本泰成共同代表が「私たちは、戦争犠牲者の死を美化してはならない」と語った。立憲民主党の近藤昭一衆院議員が、同党代表の談話を代読し、阿部知子・立憲フォーラム副代表、戦争をさせない1000人委員会事務局長の内田雅敏弁護士がそれぞれ誓いの言葉を述べた。
3閣僚が靖国神社を参拝-首相は加害責任に触れず-
同日、東京・九段北の靖国神社は、朝から雨に包まれた。新型コロナウイルス感染症のまん延もあり、人出は多くない。
この日、萩生田光一文科相、小泉進次郎環境相、井上信治科学技術担当相の3閣僚が靖国参拝した。「敗戦の日」の閣僚参拝は、2年連続だ。
菅義偉首相は、代理人を通じて「自民党総裁」として玉串料を奉納した。
菅首相はこの日、日本武道館で行なわれた全国戦没者追悼会に参列し、式辞を述べた。だが、加害責任への言及や反省の言説はなかった。
岸信夫防衛相と西村康稔経済再生相は、8月13日に靖国神社参拝した。
日本は戦後、サンフランシスコ講和条約で東京裁判を受け入れ、戦争責任を認めた。だが靖国神社には、東京裁判でA級戦犯とされた14人が英霊として祀られている。
このことからも分かるように、日本の閣僚による靖国参拝は、自らがどう「思い」を語ろうと、日本の戦争責任の否定に直結する。玉串料や真榊(まさかき)の奉納についても同じだ。
これらの行為は、憲法20条3項の「政教分離原則」に抵触する可能性も高い。
高橋哲哉東京大学名誉教授(哲学)は、『靖国問題』(ちくま新書)の中で、靖国の祭り(祀り)について次のように述べている。
「本質的に悲しみや痛みの共有ではなく、(略)戦死を賞賛し、美化し、功績とし、後に続くべき模範とすること、すなわち「顕彰」である」「「感情の錬金術」にほかならない」
靖国前で抗議ハンスト
この日、靖国神社前の歩道で、沖縄県那覇市在住の具志堅隆松さん(67)がハンガーストライキを行なっていた。前日の昼から続けているという。具志堅さんは、沖縄戦戦没者遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の代表でもある。
周りでは、支援者らが「遺骨混じりの土砂を米軍基地建設に使わないでください」と記された横断幕を掲げ、ビラ配りや署名活動をしていた。
具志堅さんは、記者に対し、次のように語った。
「沖縄戦犠牲者の遺骨がまだ眠っている沖縄本島南部の土砂を、防衛省は埋め立てに使う計画だという。どうにかやめさせたい、多くの人に現実を知ってもらいたいと思い、ここに来た。戦死者の魂は、家族の元に戻すべきだ」
千鳥ヶ淵戦没者墓苑は、1959年に東京・千代田区に創建。環境省が所管。日中戦争・アジア太平洋戦争における海外戦没者のうち、遺族に引き渡すことのできなかった遺骨を安置している。今年5月現在、37万余柱。靖国神社は、1869年に明治天皇の発議により東京・九段北に創建された招魂社から、79年に改称された神社。戊辰戦争(68~69年)以降の国内戦争と対外戦争で、「国家のために命を捧げた人々の御霊(みたま)」246万6000余柱が祀られているという。昭和に入り、国家神道の役割を強めた。