社会新報

COP26で日本の立ち遅れが浮き彫りに-気候危機対策で福島党首と「FoE Japan」の深草亜悠美さんが対談-

(社会新報2022年1月12日号1面より)

 

「気候正義を実現する―グラスゴーCOP26レポート」と題して、国際環境NGO「FoE Japan」の深草亜悠美さんと福島みずほ党首が先ごろ、オンラインで対談した。

「ネットゼロ」への懸念

福島みずほ党首 英国のグラスゴーで開かれたCOP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)に参加した深草亜悠美さんに、会議のポイントや日本の気候危機対策の問題点をレポートしていただきます。

深草亜悠美さん 2015年のCOP21で採択されたパリ協定は、今世紀末までの平均気温上昇を1・5℃に抑えるとしたが、すでに1℃の上昇で深刻な影響が表れている。気候変動の主たる原因は人為的な温室効果ガスの排出。排出増加の中心は先進国、富裕層で、被害は途上国、それも貧しい人々に集中する。気候変動が生む不正義だ。

そうした中、COP26で注目されたことの一つが「ネットゼロ」という目標。だが、これには非常な懸念がある。ネットゼロとは、温室効果ガスの排出と除去が量的にバランスした状態。除去できれば、いくら出しても大丈夫だと解釈されかねない。事実、日本政府など多くの国・企業のネットゼロ戦略は、排出分を除去するというカーボンオフセットだ。巨大企業シェルは、化石燃料の生産は増やし、排出増加分を超大規模植林で除去するという。農地の破壊や土地収奪が起こらないか心配だ。そんな、温室効果ガス削減を抜きにした危ういネットゼロが乱発されている。

脱化石宣言、日本は不参加

温室効果ガス排出の約8割は、化石燃料の燃焼によるもの。ここに踏み込まないと気候変動対策にはならない。COP26では、議長国である英国政府の主導で、石炭火力は新規建設せず既存の設備も2030年~40年代に廃止するなど脱石炭を加速させる宣言と、さらに化石燃料の海外事業支援を22年末までに終わらせるとする宣言とが発表された。2つとも日本はサインしていない。

その日本の現状だが、2020年度の国内での温室効果ガス排出量速報値は13年度比18・4%減の11億4900万㌧。目標となる30年までの46%減には、思い切った削減が必要だ。ましてや、50年までの実質ゼロ達成へのハードルは高い。だが、削減強化の中身は見えてこない。21年に示されたエネルギー基本計画の見直しでは、30年の電源構成は19%が石炭火力、原発も2割を占める。

「夢の燃料」で石炭火力延命に執着

気温上昇を1・5℃に抑えるために30年までの石炭火力全廃が先進国に求められる中、日本の石炭火力政策の重点はバイオマス燃料や「夢の燃料」とされる水素・アンモニアを混ぜての効率アップに置かれている。石炭火力の延命策だ。これでは、岸田首相・日本政府がCOPで化石賞をもらうのも当然。石炭火力の新設や海外輸出をきっぱりやめるべきだが、そのためのリーダーシップを政府が発揮できていない。

福島 今度ドイツで成立した社民党、緑の党、自由民主党の連立政権は火力発電全廃の期限を2038年から30年に前倒しした。

深草 脱原発を宣言したドイツは、気候変動対策にも本気で取り組む姿勢だ。実効性ある対策は、社会を大きく変える覚悟と合意なしにはできない。スコットランドは化石燃料関係の労働者が大勢いて、労働組合と環境NGOが「健康な地球なくして労働なし」といったスローガンをつくり連帯関係を築いている

原発は脱炭素の答えにはならない

福島 深草さんはグラスゴーの現地でも、原発は脱炭素・脱化石の答えにはならないとおっしゃっている。COPの場での原発の位置付けを教えてほしい。

深草 京都議定書やパリ協定の炭素取引システムでは、クレジットとして原発は認めていない。たとえば、日本がインドの原発建設に協力して炭素排出を減らしても、削減分を自国の排出権として確保できない。ただ、原子力産業がCOPの会場にパビリオンを出しており、原発は気候変動対策に有効だと宣伝している。福島原発の事故では誰も死んでいないとか、ひどいことも言っている。

福島 国・政府が気候変動危機に本気で向き合おうとしない日本の状況、どう変えるか。

深草 やはり、COPの議論を持ち帰り、国としての対策を強化していくことに尽きる。日本の気候変動対策は、政府任せだとエネルギー政策が先に来てしまう。方向転換には市民社会からの提案と行動が欠かせない。対策先送りのツケを払う若者、将来世代の声を政策にどう反映させるかがカギとなる。(文責・編集部)

 

↑福島党首

 

↑深草亜悠美さん

 

↑化石燃料を燃焼することで地球の温暖化が止まらない(イメージ写真=ⒸiStock)。

 

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