社会新報

【主張】ガザの戦闘拡大~中東和平を誓ったオスロ合意に立ち返り即時停戦を

(社会新報10月25日号3面より)

 

 第4次中東戦争勃発から半世紀目に当たる10月7日、パレスチナ暫定自治区のガザ地区を実効支配しているイスラム組織「ハマス」が、イスラエルを攻撃した。イスラエルも激しい空爆で応酬し、双方の死者は開戦から1週間(15日時点)で4000人を超えたと伝えられている。
 ハマスはガザから数千発のロケット弾を発射し、武装部隊を越境させた。イスラエル市民数百人が犠牲となり、外国人を含む百数十人が拉致された。イスラエルに拘束されている約5000人のパレスチナ人との捕虜交換が目的と考えられる。17日にはガザ地区北部の病院が爆撃され、500人が亡くなるなど、民間人の犠牲が拡大している。
 イスラエルのネタニヤフ首相は、「ハマスを壊滅させる」と宣言。政治課題を棚上げした挙国一致政権を発足させ、本格的な地上戦の準備に入った。すでに正規軍17万人、予備軍36万人が招集され、11日にはガザ地区北部の住民110万人に対して、避難するよう通告した。しかし避難したくてもできない人は多い。人口が密集しているガザ地区で市街戦が繰り広げられれば甚大な被害が生じることは必至だ。すでにイスラエルはガザを完全封鎖し、電気を遮断。水や食料も尽きつつある。このままでは人道的な惨事も起きるだろう。戦争が周辺国に広がり中東全域が混乱する可能性も高い。イスラエルによる地上戦を、何としても避けるべきである。
 市民の犠牲を顧みないイスラエル軍の大規模地上戦は断じて容認するわけにはいかない。国際社会はあらゆる手段を尽くして、イスラエルの「血の報復」を止めなくてはならない。暴力の連鎖は何も生まないことを肝に銘じることが必要だ。
 昨年暮れに「史上最も右翼的」と評されるネタニヤフ極右政権が発足した後、イスラエルはパレスチナ自治区をたびたび攻撃し、中東和平プロセスへの挑発を重ねて来た。今回の紛争の背景に、イスラエルによる国際法違反の占領や入植地拡大などがあることは明らかだ。パレスチナ問題の解決なくして、中東の安定や国際平和は決して実現しない。中東和平を誓った30年前のオスロ合意の精神に立ち返り、イスラエルの軍事行動を止め、パレスチナ和平に真剣に取り組むことが国際社会に求められている。