社会新報

愛媛県松山市で第59回護憲大会~改憲発議阻止の闘いに全力~軍拡反対へ決意

護憲大会の開会総会(11月12日、松山市内)。

来賓として出席した大椿ゆうこ社民党副党首が開会総会で熱く連帯のあいさつ。

来賓として出席した大椿ゆうこ社民党副党首が開会総会で熱く連帯のあいさつ。

主催者を代表して勝島一博実行委員長があいさつした。

 

(社会新報11月23日号1面より)

 

 「憲法を変えることより活かすこと 憲法理念の実現をめざす」をスローガンに掲げた第59回護憲大会が11月12日から14日まで、愛媛県松山市で開かれ、47都道府県から650人が参加した。主催は同実行委員会。3年ぶりの対面開催となった。改憲発議阻止の闘いに全力を挙げることを誓い合った。(分科会などの詳報は次号4・5面に掲載
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 初日の12日、開会総会が開かれ、勝島一博大会実行委員長が主催者あいさつを行ない、①改憲発議を許さない取り組み②軍備増強を阻止する闘いーーの2点を提起した。
 勝島委員長は、改憲勢力の危険な動向について、「11月開催の憲法審査会の議論で明らかになったように国会議員任期延長や緊急事態条項の個別課題では意見がまとまりつつあり、今後一気に改憲発議へ動き出す可能性があることに警戒しなければならない。私たち自身の覚悟が問われる正念場だ」と訴えた。
 6月16日に自民党国防議員連盟が政府へ提出した産・官・学に自衛隊を加えた産・官・学・自が一体となった防衛生産・技術力の抜本的強化についての提言に言及し、「国家ぐるみの軍事産業育成とは、日本経済が武器製造・輸出に大きくかじを切ることにほかならない。それは日本製の武器で人が殺されるということだ」と警鐘を鳴らした上で、「軍事大国への新たな国作りが、いま目前に迫っており、断じて許すことはできない」と決意を表明した。

 続いて越智勇二副実行委員長(愛媛県平和運動センター議長)が開催地から歓迎のあいさつを行なった。

「憲法28条」を活かす

 社会民主党を代表して大椿ゆうこ副党首が連帯あいさつし、自身が経験した雇い止め事件に触れながら、憲法を活(い)かすことの大切さを次のように訴えた。
 「護憲と言っても、若い人たちにはピンとこない。かつての私も多分そうだった。私が憲法は自分自身が生かすものだと初めて実感したのは、30代半ばに有期雇用で勤めていた大学を雇い止めになった経験からだ。労働組合の門をたたき、継続雇用を求めて闘った。この時、初めて憲法28条がうたう団結権・団体交渉権・団体行動権の労働三権の全てを実践で体験した」
 「憲法がありながら、労働組合がありながら、助けられてこなかった人たちがいる。憲法を活かすことを体で経験してきた一人として、このことを伝えていく役割が私にはある」
 また、大椿副党首はネットを介して広がる差別の深刻さについて指摘した。
 「京都宇治市のウトロ地区放火事件や、沖縄辺野古の座り込み反対運動を愚弄(ぐろう)する『ひろゆきツイート』、部落問題の『鳥取ループ』事件など、ネットを介して差別が広がり、デマが拡散し、マイノリティーの人たちが生きずらい社会をつくっている。新たな差別の拡大にしっかりと対抗し、カウンターとして立つことを確認したい」

 

日米共同演習に抗議

 さらに大椿副党首は、今月10日から19日まで全国で実施された自衛隊と米軍の日米共同統合演習について「社民党は、平和外交に背を向けて台湾有事を想定し、中国をことさら刺激するこの演習に、はっきりと抗議したい」と強調。
 大椿副党首のほか、則松佳子さん(連合副事務局長)、近藤昭一さん(立憲民主党企業・団体交流委員長)から連帯あいさつがあった。そして、田中直樹事務局長が大会基調案を提案した。

 メーン企画として「日中国交正常化50年」をテーマにしたシンポジウムが開かれ、杉浦ひとみさん(弁護士)をコーディネーターに、内田雅敏さん(弁護士)、林千野さん(日中関係学会副会長)、飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)が討論した。飯島さんは、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かねばならない」と説く「ユネスコ憲章」前文を引用し、「戦争は絶対にいけないという気持ちを一人でも多くの市民に定着させることこそが戦争の防止につながる」と指摘した。内田さんは、日中共同宣言や日中平和友好条約など4文書に関し、「先人たちが残した平和資源の活用しない手はない」と強調した。

「日中友好」を大切に

 林さんは日中ビジネスの現場からの視点で「日中平和友好条約の精神に立ち返り、平和憲法を守り抜くことこそ、地域の平和と安定に寄与する」と指摘した。
 翌13日には4つの分科会に分かれて問題提起が行なわれた。テーマと助言者は以下の通り。第1分科会「現下の改憲策動」(憲法学者の飯島滋明さん)、第2分科会「軍拡・基地強化」(防衛ジャーナリストの半田滋さん)、第3分科会「ジェンダー平等社会をめざして」(斉藤正美・富山大学非常勤講師)、第4分科会「憲法を学ぶ」(憲法学者の清水雅彦さん)。

来年は新潟市で開催

 大会の最後に「『改憲発議阻止、軍備増強を許さない』闘いを中心に据え、さまざまな闘いをこれと連動し、全国で運動の広がりと盛り上がりをつくっていこう」とするアピールを採択した。なお、遠藤三郎賞には「原子力発電に反対する福井県民会議」代表委員の住職・中嶌哲演さん(個人表彰)と三多摩平和運動センター(団体表彰)が受賞した。
 来年の大会を新潟市で開くことも確認した。

日中国交正常化50周年をテーマにしたシンポジウムのコーディネーターとパネリストたち。