社会新報

【主張】障がい者と「合理的配慮」~市民レベルの理解が変わっていない

(社会新報4月18日号3面より)

 

 「今後はこの劇場以外で見てもらえると、お互い、いい気分でいられると思うのですが、いいでしょうか」 
 ある車いすインフルエンサーが、映画鑑賞後に映画館の従業員から伝えられた言葉である。劇場から出るために映画館の従業員に手伝っていただいた後のことだ。本人は、過去にも同様の対応をしていただいたと従業員に伝えたが、従業員からはそのような経験は無いと伝えられた。本人は、冒頭の言葉や過去の事実を否定されたことなどに納得できず、一連の流れをX(旧ツイッター)へ投稿したため発覚した。
 投稿翌日には、映画館を経営する「イオンシネマ」が謝罪文をXへ投稿した。さらには、本人と映画館の支配人、イオンシネマの営業本部長らで、今回の対応についての詳細な説明と、今後のバリアフリー対応などについて話し合いが行なわれたとのことだ。イオンシネマの対応は素早く、障害者差別解消法に基づく「合理的配慮」に対する経営層の理解が垣間見える。
 今回の最大の問題は、解消法に基づく「合理的配慮」が、世間にあまりにも浸透していないことだ。Xへの投稿後、SNS上で「わがままだ」「従業員がかわいそうだ」など、本人への誹謗(ひぼう)中傷があふれかえった。「合理的配慮」を求める障がい者へ罵詈雑言を浴びせる光景は、車いすユーザーの無人駅での乗車をめぐる3年前の問題と同じ構図である。
 法改正により、企業による障がい者への「合理的配慮」は今年4月から義務となった。障がい者が企業に「合理的配慮」を求めることは、わがままではない。健常者と同じ扱いを求めるものであり、それ以上のものではない。実際に対応するのは現場の労働者であるだろうが、労働者へ過度な負担となってはならない。もし過度な負担となるならば、それは障がい者の問題ではなく、経営者の問題である。もし企業の対応が追いつけないのであれば、それは助成ができていない自治体、国の問題となる。実際には、取り組む企業をサポートする制度を自治体などで実施している。社会制度では、障がい者が健常者と同様にサービスを享受できるよう動いている。しかしながら、市民レベルでは「合理的配慮」への理解が3年前から前進していない。
 障がい者が「合理的配慮」を求める時に、よく「甘えるな」と言われる。甘えているのは「合理的配慮」を学ぼうとしない健常者だ。