社会新報

辺野古新基地建設の断念を~沖縄「建白書」10年で日比谷野音集会

沖縄「建白書」10年で日比谷野音集会(1月27日)。

 

(社会新報2月15日号1面より)

 10年前の1月27日、沖縄の全41市町村の首長らが東京を訪問した。「オスプレイの配備撤回・普天間飛行場の閉鎖・撤去と県内移設断念」を求めて署名した「建白書」を、当時の安倍首相に提出するためだ。そして今年の同日、「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会は、オール沖縄会議が取り組む「辺野古新基地建設の断念を求める」国会請願署名に呼応して、当時と同じように東京・日比谷野音で集会とデモを行ない、800人が参加した。
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 主催者あいさつに立った実行委の野平晋作さんは、辺野古新基地建設への「ノー」の意思は、2019年の県民投票や県知事選などで示され続けていると強調。「沖縄には沖縄の民主主義があり、国には国の民主主義がある」と平然と言ってのけた岩屋元防衛相を引き合いに、「在日米軍基地の7割を抱える沖縄県民の民意を尊重できないのなら、日本に民主主義があるとはいえない」として、「沖縄に連帯して日本全国の民意を示そう」と呼びかけた。
 また、伊波洋一参院議員が、「連帯を力にして国会でしっかり取り組んでいく」とあいさつした。

全国が攻撃の対象に

 オール沖縄会議事務局長の福元勇司さんは、署名の期限を5月19日まで延長したことを報告。沖縄の日本復帰当時を振り返り、建議書を携え屋良朝苗行政主席が上京した際も米軍基地を残すことを決めた「沖縄返還協定」が強行採決されたとし、「政府は沖縄県民を一顧だにしない」と批判した。
 その上で、「辺野古移設は負担軽減ではない。普天間飛行場にはない軍港や弾薬庫をつくる基地強化だ」と鋭く指摘。「安保3文書改定によって事実上の先制攻撃も可能となれば、全国が攻撃対象になる。沖縄だけの問題ではない」と訴えた。
 ビデオメッセージを寄せた玉城デニー沖縄県知事は、「辺野古新基地建設に反対する県民の強い意志がある限り、県内移設は実現しないと確信している」と述べた。「平和こそが暮らしの原点」と強調し、請願署名への協力を求めた。
 ジャーナリストの金平茂紀さんは、「日本政府は沖縄を戦場にしようとしている」と批判。「ウクライナにミサイルを打ち込むプーチンを批判するのであれば、沖縄に大量のミサイルが配備されている状況も同じ熱量で捉えなくてはいけない」と述べ、「敵基地攻撃能力の保有について『専守防衛の範囲内』と詭弁(きべん)をろうする首相に従う必要はない」と訴えた。

10年前のくさび継承

 ルポライターの鎌田慧さんは、「沖縄の犠牲の上に本土の平和があるということ。沖縄から離れたところにいると無感覚になりやすい」として、「沖縄が抱える問題に平然としていることはできない」と述べた。
 東京外国語大学名誉教授の西谷修さんは、「安保3文書改定の閣議決定が、国会を通さずにそのまま国の決定となっている」と政府を批判。憲法違反を追及せず、増税論議に乗じる野党があることにも不満を示した。「10年前のくさびを受け継ぎ、辺野古新基地建設を止めなくてはいけない」と訴えた。
 「辺野古」県民投票の会の元代表・元山仁士郎さんは、「政府の強行には絶望感すら抱く」と述べつつ、自身の活動を振り返りながら「県民投票で民意が示されたことで、辺野古新基地建設反対を強く主張できるようになったのでは」として、「行動することで変えられることがある」と思いを語り、「沖縄に甘えず、首都圏からも声を上げてほしい」と訴えた。

PFAS対策を日米政府に迫れ

 戦争をさせない1000人委員会の菖蒲谷眞一さん(全水道書記次長)は、米軍基地から流出する発がん性物質である有機フッ素化合物PFASによる水質汚染について、「国民の生存権に関わる問題であり、日米政府に対策を強く要請しなければならない」と述べた。
 米軍機部品落下事故のあった宜野湾市緑ヶ丘保育園で父母の会副会長を務めた明有希子さんは、「昨年、関東に引っ越してきたが、事故から5年間、誹謗(ひぼう)中傷を浴び続けている」と語り、「米軍基地周辺の学校では、米軍機のひどい騒音の中で授業を行なっている。事件・事故、騒音もない本土での生活を、娘は『インチキ』と言った。子どもでも分かる差別がある」と切実さを訴え、「将来の家族に米軍基地のない沖縄の風景を見せたい」と語った。

 

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