社会新報

遺骨混じり土砂を使うな~沖縄戦遺族らが防衛省に緊急交渉

防衛省担当者(手前)に6万6千筆以上の署名が手渡された。(6日、衆院第一議員会館)

 

(社会新報2月22日号3面より)

 

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんと沖縄県内外から来た沖縄戦戦没者遺族が6日、衆院第一議員会館で沖縄激戦地土砂の埋め立て使用阻止のため、防衛省との緊急交渉を行なった。社民党から福島みずほ党首、大椿ゆうこ副党首が参加した。
 最初に具志堅隆松さんが、沖縄島南部を埋め立て材採取候補地から外してほしいという6万6164人の署名を防衛省担当者に手渡した。それに対し防衛省は、「ご遺骨の問題は真摯(しんし)に受け止める必要があると認識しており、こうしたことも踏まえながら、事業を進める」と回答するのみだった。
 具志堅さんは、「遺骨の問題が重要だと言うのなら、南部の土砂は使わないということだと受け取ってよいのか」とただしたが、最後まで「南部で土砂を採らない」と言おうとはしなかった。沖縄戦戦没者の遺族は防衛省担当者に、「自分の肉親の遺骨を海に棄てられたらどう思うか」と迫ったが、担当者は「個人的な見解は答えられない」と回答を拒否した。

日本人以外の遺骨も

 具志堅さんや遺族が強調したのは、「これは日本国内だけの問題ではない」ということだ。南部にある遺骨には、沖縄住民・日本兵のみならず、朝鮮半島・台湾出身者や米兵のものも含まれている。具志堅さんらは「防衛省としてこの問題が国際問題であることを認識しているのか」とも問いただしたが、同省は日本人以外の遺骨が南部にあることを認知しているかどうかさえ明言しなかった。
 今回は、南部土砂採取には人道上の問題に加え、土木技術的な観点からも難があることが指摘された。沖縄島南部の琉球石灰岩は「白石」で、北部の古生層石灰岩「黒石」に比べ、吸水率が大きく、圧縮強さが弱い。沖縄防衛局自ら、辺野古側工事の護岸造成材については「黒石岩ズリ」と指定してきており、これまで辺野古新基地建設工事で「白石」が使用されたことはない。

「白石」の強度に疑問

 軍事基地建設で使用する材料は、地盤沈下や液状化を起こさない十分な強度が求められるはずだ。しかし防衛省は、「埋め立てに用いる材料として必要な規格等に適合しているか確認を行なうものと承知」していると主張するのみで、南部の「白石」の強度試験を行なったかどうかも明らかにしなかった。
 また沖縄防衛局は、設計変更承認を申請した際、埋め立て土砂の採取候補地と調達可能量を示しただけで、具体的な採取地・採取量を特定していないが、公有水面埋立法施行規則第3条は、「埋立てに用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書」を添付することと定めている。防衛省は承認申請が「関係法令に基づき適切」と言い張るが、候補地や調達可能量を示すだけで必要事項が満たされることの根拠は示さなかった。
 交渉の最後には、遺族と具志堅さんが防衛省の担当者の前に出て、「南部を採取地から外してほしい」とあらためて訴えた。遺族の一人は、南部土砂の写真を見せながら、鉄の暴風と戦後の風化を受けて粉々になった遺骨は細かな石と区別がつかないことを示した。業者が遺骨を選別するなど不可能だ。防衛省は、採取地を決める責任を業者に押しつけず、南部を候補地から外すと決断すべきだ。