(社会新報7月11日号3面より)
今年は自衛隊誕生から70年、そして集団的自衛権の行使を容認する違憲状態の閣議決定から10年となる。1950年に勃発した朝鮮戦争によりGHQが設立を命じた警察予備隊から保安隊への改組を経て、54年7月1日、防衛庁設置法(現防衛省設置法)と自衛隊法が施行され、自衛隊が発足した。発足後は専守防衛の名のもと、自衛のための最小限度の防衛力とする軽武装路線であった。90年代には、湾岸戦争後のペルシャ湾での機雷除去など、海外派遣が始まった。
そして、大きな転換点が2014年、第二次安倍政権での「集団的自衛権」を容認する憲法9条の解釈変更である。密接な関係がある他国への攻撃は日本へも波及するため、日本の存立危機事態として「集団的自衛権」を行使できるという、強引で飛躍した解釈変更である。そして、15年には「集団的自衛権」行使を一部容認する戦争法(安全保障関連法)が成立した。
その後、岸田政権では、22年12月に、敵基地攻撃能力を保有し、防衛費を5年で43兆円へ大増額するなどの内容の「安保3文書」改定があった。この3文書に基づき、今年度防衛費の予算は過去最高の7兆円超となった。
また、長距離ミサイル「トマホーク」や輸送機オスプレイなどの導入、そして沖縄、南西諸島を中心とした軍事基地化が進行している。自衛隊の強化だけでなく、防衛産業の国有化を可能とする法律や秘密保護法、重要土地規制法などが成立し、軍事国家化も進む。
本国会では、自衛隊が事実上米軍の指揮に入る防衛省設置法改正も行なわれた。「防衛装備移転三原則」の見直しにより、殺傷武器の輸出も可能となった。
自衛隊発足70年のうち、「集団的自衛権」行使容認解釈変更からの10年間は、自衛隊の軍拡化、日本の軍事国家化がすさまじい勢いで深まった。当然ながら、社民党などの護憲政党や、平和を望む市民一人ひとりが抗議運動を展開している。岸田政権による軍拡の動きは、ちゅうちょなく加速している。その一因としてロシア・ウクライナ戦争などの市民の不安を高める現実が、軍拡への抵抗感を弱めていることがある。
これからの10年は、さらに戦争への道が進む危険性がある。いや、戦争国家が完成する恐れもある。徹底した反対運動と市民感情への寄り添いが重要となる。