危うい重要土地規制法と経済安保法の廃止を ~海渡さん講演「頑張れば無効化できる」
(8月17日号3面より)
7月23日、横浜市瀬谷区の日本キリスト教団横浜二ツ橋教会で、海渡雄一弁護士が重要土地規制法と経済安保法の危険性を訴える講演を行なった。
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海渡さんは、第2次安倍政権が発足して以降の約10年間の自公政権について、「よくぞここまで悪いことをやり続けた」と語った。国家安全保障会議(日本版NSC)の設置(13年)や特定秘密保護法(同年)、平和安全保障法制(戦争法/15年)、共謀罪法(17年)、デジタル監視法(昨年)の立法などのことだ。この流れで、重要土地規制法と経済安全保障推進法(経済安保法)が成立した。
重要土地規制法の闇
海渡さんは、重要土地規制法の内実について次のように語った。
「基地とか原発など重要インフラの周辺住民や出入りする人たちを監視するための行政法だ。そうした人たちを調査・分析する機関は内閣府に置かれる。重要施設の機能を阻害する行為と見なされれば、中止勧告や命令が出される。従わない場合は刑事罰の対象になる」
海渡さんは、「そもそも法律を作らなければならない根拠(立法事実)が不明だ」と批判した。
政府は、外国資本が基地周辺の土地を購入しているといった事実の存在について、否定するか曖昧な答弁を繰り返してきた。
海渡さんは、こうした政府の対応について、「立法事実があるか否かを調べるのが、この法律の目的なのか」と疑問を呈した。
条文の中身についても、厳しく批判。
「最大の問題は、法の規定する概念や定義が曖昧で、政府の裁量でどのようにでも解釈できるということだ。『注視区域』指定の要件である『重要施設』のうち、『国民生活に関連を有する施設』とは何かが全く分からない。基地だけでなく、原発とか水源とか、何でも入る可能性がある。中身はこれから決まる」
「注視区域」指定要件の「(施設)機能を阻害する行為の用に供されること」に対しても、「周辺住民らは皆、中身が分からないまま監視対象になり得る。何をしたら犯罪に問われるかも全て闇に覆われている。刑事法の根本原則に反している」と批判した。
経済安保法の罠
海渡さんは経済安保法について、「経済の手段をもってする戦争に関する法律、つまり軍事立法だ」と断じた。
政府はその立法目的を「先端技術を保護する」「サイバー攻撃を防ぐ」ことだなどと語るが、海渡さんは「真の目的は日本の主要企業から中国系のITを一掃することだ。米国系ITが取って代わるなら米国は大喜びだ」と語った。
この法律は、「外部からの妨害行為を防止する」「重要物質を外部に依存しない」ことを目指している。
この点について海渡さんは、「間違いなく、中国は『外部』であり、米国は『内部』だ。日米間で先端軍事関連技術の協力態勢を深めるのが目的だ」と断じた。
同法には、国内での官民協同による先端重要技術開発の推進や、安全保障上機微な特許出願の非公開も含まれる。
「官民パートナーシップの協議会を設置し、軍事技術に関連する先端技術研究を後押しするのが狙いだ。(当該)研究者には学位を与え、囲い込む。特許出願の非公開化も軍事研究のためだ。民間企業の人員を『国家の一員』とし、セキュリティクリアランス(秘密情報管理)を強めていく」
適用のハードルを高く
さらに海渡さんは、土地規制法と経済安保法について、「共に骨格の法律以外は何も記されず、細部は全て政省令に委ねている」という問題点を指摘した。
土地規制法は、今年9月に全面施行となる予定だ。その前に、基本方針に関するパブリックコメントが募集される。
海渡さんは、「頑張れば、まだ何とかなる。両法とも、法適用のハードルを上げて実質的に無効化させる必要がある」と、強く訴えた。
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