社会新報

脱原発と脱化石を~気候危機の対策を急いで~9・18代々木公園に8000人

パレードする「ワタシのミライ」の人たち。参加者は約8000人となった(9月18日、東京都渋谷区内)。

多くの若者もパレードに参加し、「原発反対」「NO!化石燃料」とコールした。

 

 

(社会新報10月4日号1面より)

 

 世界各地で熱波や豪雨など異常気象が頻発し、日本では福島第1原発からの汚染水が海洋放出される中、東京・渋谷区の代々木公園で9月18日、脱原発と温暖化対策を求める集会が行なわれ、約8000人が参加。集会後、渋谷や原宿の周辺をデモ行進した。
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 集会とデモは、「さようなら原発1000万人アクション」「ワタシのミライ」「Fridays For Future Tokyo(フライデー・フォー・フューチャー・東京)」の3団体が主催。
 脱原発、再生可能エネ集会では、ベテラン世代と若者世代が共にトーク。とりわけ、元京都大学原子炉実験所助教で脱原発の著書が多数ある小出裕章さんは、専門家として熱弁を振るった。「福島第1原発事故から12年半が経つが、今も原子力緊急事態宣言は解除できていない。16万人もの人たちが生活を根こそぎ破壊されて故郷を追われ、今も数万人が帰ることができない」と事故を忘れているかのような世の中の風潮を危惧。また、汚染水問題の報道に苦言を呈した。
 「今、福島の原発の敷地の中にある130万㌧を超える水の中には放射性物質であるトリチウムという物質が国の基準値の10倍も含まれている。トリチウムはどんな処理をしても取れないので、れっきとした放射能汚染水であって、そのように呼ぶべきなのに、日本のマスコミが腐りきってしまっていて、率先して『処理水』と報道してきた」

なぜ海洋放出ありき

 あくまで政府と東電が海洋放出ありきで強行した動機については、小出さんは「原子力政策の根幹に関わることだ」と指摘した。
 「政府の計画では、原発の使用済み核燃料は青森県六ケ所村に建設中の六ケ所再処理工場に送り、そこで長崎原爆の材料になったプルトニウム239を取り出すことに。残りはガラスで固めて『核のゴミ』とするが、トリチウムだけは取り除くことができない。福島の原発で溶けた核燃料は250㌧に対し、六ケ所再処理工場では毎年800㌧の核燃料を処理して、それに含まれていたトリチウムは全部、海へ流す、それでも安全だと政府は認め、この作業を40年間続けることに許可を与えた。トリチウムを含む汚染水を海に流してはいけないとなると、六ケ所村再処理工場を運転できなくなり、日本の原子力の根幹が崩壊してしまう。だから、政府は何としても汚染水を海に放出する必要があった」
 集会では、「さよなら原発1000万人アクション」からルポライターの鎌田慧さんも発言。岸田政権の原発推進や汚染水の海洋放出について「漁業団体の理解が進むまで絶対、汚染水を放出しないとの約束があったのに、それもチャラにして海に放出。47年経った老朽原発である高浜原発も再稼働させてしまった。つまり、福島第1原発事故の反省が全くない政治だ」。

世界で増す気候難民

 若者世代からは、フライデー・フォー・フューチャー・東京の川崎彩子さんが発言。「ふだん、私たちは気候危機(=温暖化による危機)に対し声を上げているが、こうして原発反対でも一緒に声を上げられるのはうれしい」と語った。また、「原発事故と同じように、気候危機でも、災害によって住むところを追われている『気候難民』が世界的に増えている」と語った。
 同じく若者世代から、「ワタシのミライ」の山本大貴さんは、温暖化対策を口実にした政府や電力会社の原発推進について「気候危機対策には原発が必要だとか、逆に原発を無くすためには火力発電が必要だとか、誤った認識を広げている」と批判。「再生可能エネルギー100%は可能で、それが原発問題や気候危機の一つの解決策であることを訴えたい」と語った。

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 【主催3団体】「さようなら原発1000万人アクション」は、福島第1原発事故を機に、故・大江健三郎さんや故・坂本龍一さん、作家の落合恵子さんら著名人らの呼びかけで活動を開始。以来、脱原発署名や集会、デモなどを行なっている。

 「Fridays For Future Tokyo」は、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんに触発された、気候危機対策を求める若者主体の団体。

 「ワタシのミライ」は学生や市民、環境NGO、などによる再生可能エネルギー100%と公正な社会を目指すネットワークで、脱原発も訴える。

 

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