社会新報

【主張】自民新総裁の選出-核禁条約ふれぬ岸田氏に期待できない-

(社会新報2021年10月6日号3面《主張》より)

 

新型コロナウイルス緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が9月30日で全面解除された。新規感染者は減少しているが、インフルエンザなど感染症が広がりやすい冬を控えて、専門家は「第6波」の到来を懸念する。

ところが菅義偉首相(当時)はいたって能天気だ。先月28日の記者会見でワクチン接種の実績と効果を掲げて、「明かりは輝きを増している」と述べた。

この人には「自宅療養」の名の下に十分な治療も受けられずに亡くなった人やまともな補償もなく閉店や廃業に追い込まれた事業者への謝罪の思いはないのだろうか。

ところで、「前例のない大接戦」といわれたドイツの総選挙が9月26日に実施され、社会民主党(SPD)が得票率25・7%で16年ぶりに連邦議会で第1党となった。社民党は同じく社会主義インターに加入する友党としてドイツ社民党の勝利を心からお祝いし、歓迎する。

選挙戦では今年7月にドイツ西部を襲った洪水で甚大な被害が生まれたことから気候変動対策が最大の争点となった。総選挙で国民に問うにふさわしいテーマだといえる。それは76・6%に上った投票率からもうかがうことができる。

ひるがえって日本では投票率の低下が深刻だ。前回17年の衆院選は53・68%だった。その背景に「政治に期待しても何も変わらない」という国民の政治不信があることは明らかだ。国会で野党の質問にまともに答えない、揚げ句の果てに憲法に基づく国会開催要求にも応じない政治がまかり通っている。投票率の低下の大きな原因がここにある。

そんな折、自民党は総裁選を実施し、岸田文雄前政調会長を新総裁に選んだ。岸田氏は自民党内ではハト派といわれる派閥・宏池会の会長だが、総裁選では被爆地広島を選挙区としながら、核兵器禁止条約の批准、調印に言及せず、「敵基地攻撃論」、「台湾有事」に伴う安保法制の適用まで主張した。森友・「桜を見る会」の再調査についても否定的だ。憲法改悪に突き進む新与党総裁に日本の将来を委ねることはできない。

社民党は衆院比例代表四国ブロックの予定候補に三野ハル子香川県連代表を内定した。これで、全国11ブロックすべてで候補者が擁立されることになった。

立憲野党間の選挙協力を深めながら、「生存のための政権交代」を実現するために、社民党は全力を挙げる。

 
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