社会新報

自民党政治全体が「贈収賄」構造~元内閣審議官の古賀茂明さんが指摘

「天が与えた最後のチャンスに立憲勢力はどう応えるのか」と題して講演した古賀茂明さん。立憲フォーラムと「戦争をさせない1000人委員会」が共催。

 

(社会新報3月14日号1面より)

 

 自民党の派閥が主導した国会議員らのパーティー券・裏金問題(メモ)で、東京地検は1月19日に事実上の捜査を終えた。結局、起訴した衆参議員は派閥幹部でない安倍派の3人だけ。しかも、政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑のみで、脱税容疑での起訴はなかった。
 こうした中で、日ごろ税務署から細かい点まで指摘され、税金を搾り取られている庶民からは、「自民党の国会議員は特別扱いなのか?」「脱税しても野放しか?」などと疑問や怒りの声が噴出している。
 今通常国会でも、「裏金まみれ」「金権まみれ」の自民党政治への追及が熱を帯びている。だが、自民党議員らは説明責任を果たすことなく、逃げ回る様相だ。
 この状況下で、元内閣審議官で政治経済評論家の古賀茂明さんの講演「天が与えた最後のチャンスに立憲勢力はどう応えるのか」が2月19日に参院議員会館で行なわれ、約100人が参加した。立憲フォーラムと「戦争をさせない1000人委員会」の共催。

検察の変な相場観

 古賀さんは、自民党政治の本質について次のように指摘した。
 「自民党はこれまで、基本的に企業・団体献金に頼りながらずっとやってきた。そのおかげで権力の座にいられる。だから、これまでカネと票を持ってきてくれた人(や組織や企業)に利権の『お返し』をする。要するに、自民党の政治全体が『贈収賄』の構造になっている。この構造は、裏金問題があってもなくても変わらない」
 また、今回の裏金問題で地検が自民党の派閥幹部らを起訴しなかったことについて、次のように語った。
 「永田町(日本の政界)やマスコミの中には、(検察の相場を推し量って)『(裏金は)4000万円まではいい』みたいな変な相場観がある。だが、そんなことは法律のどこにも書かれていない。本来は1円でもダメなはずだ。また、『自白しなければ(起訴は)難しい』というのも、検察がつくった相場観だ」
 その上で古賀さんは、「全部立件(起訴)しろと検察に求めていくべきだ。もし立件しないなら、皆が納得できるように徹底的に調べてほしいと求めていくべきだ」と訴えた。

脱税問題は心に響く

 「自民党ウラガネ・脱税を許さない会」(藤田高景代表)の12人は2月1日、自民党安倍派の10人を所得税法違反(脱税)の疑いで東京地検に刑事告発した(本紙2月22日号1面参照)。古賀さんもこの会の「呼びかけ人」の一人だ。
 古賀さんは、パーティー券の「キックバック」分や「中抜き」分について、「本来は議員がもらった時点で課税しなければいけないのに、国税当局は課税していない。しかも、議員は政治資金収支報告書に(当初は)誰も出していない。後になって、『政治活動でした』とか『うちの政治団体がもらった』みたいな話で、ぜんぶお茶を濁している」と批判した。
 こうした状況を踏まえ、「この脱税問題は本当に皆の心に響くので、立憲勢力は徹底的に追及してほしい」と訴えた。

立憲勢力は王道歩め

 その際の対応として、古賀さんは、「政治資金の問題は次の総選挙で確実に大きな争点になるので、立憲勢力は最後まで突っ張る姿勢が大切だ。もし変な妥協をすれば、自民党の共犯になってしまう」と力説した。
 さらに、「自民党員限定の調査」結果から「自民党員でさえ自民離れが進んでいる」ことを示し、「次の選挙で自民票が激減して、自民党は自壊する可能性がある」と指摘した。その上で立憲勢力に対し、「もう少し頑張れば明るい展望が見える」と奮起を促した。
 古賀さんはこうした認識を踏まえ、立憲勢力に対し、「一回のチャンスで政権は取れないかもしれないが、場当たりの妥協はせずに、次のチャンス、その次のチャンスと、王道を進んでもらいたい」と訴えた。

 
(メモ)【自民党のパーティー券・裏金問題】自民党の安倍派を中心とする派閥が政治資金パーティーの一部収入を政治資金収支報告書に記載せず、また所属議員側もパーティー券(通常1枚2万円)の販売ノルマ超過分などを適正な会計処理をせずに「自由に使えるカネ」にしていた問題。議員側の裏金化の手法は、ノルマ超過分を派閥側から議員側に還流させる「キックバック」と、最初から超過分を議員側が手元に置く「中抜き」に大きく分けられる。

 

衆院政治倫理審査会の冒頭、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件について謝罪する岸田首相=2月29日午後。(衆院インターネット審議中継の画像より)