社会新報

国連勧告を受けて入管の改善を ~ウィシュマさんの遺族らが会見で訴え

難民認定申請者や死亡したウィシュマさんの遺族、弁護士ら(11月8日、参院議員会館)。

コンゴからの難民認定申請者であるムセンブラ・サイさんが会見(同)

 

(社会新報11月30日号2面より)

 

 人権に関する国連組織「自由権規約委員会」は11月3日、日本の人権状況の総括所見を発表。入管問題に対しても改善するよう勧告した。これを受け、昨年3月に名古屋入管で死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの遺族やその弁護士、難民認定申請者らが同8日、参院議員会館で会見した。
 自由権規約委員会の勧告は、入管施設で2017~21年に収容者3人が死亡したことを懸念し、収容されている人々が適切な医療を受けられるよう求めた。
 勧告で言及された3人のうち、ウィシュマさんは、吐血を繰り返し、体重も激減していた。さらに、死亡する半月ほど前の検査でウィシュマさんの「飢餓・脱水状態」を示す明確な結果が出ていたが、入管側は仮放免することも、外部病院での治療も行なうこともなく、その結果、ウィシュマさんは昨年3月6日、33歳の若さで亡くなった。

無期限収容をやめて

  8日の会見で、ウィシュマさんの遺族を支援する駒井知会弁護士は、「ウィシュマさんの命と引き換えに出された勧告だと強く感じた」と語った。今回、自由権規約委員会はその勧告で、「入管収容に代替措置を設けること」「収容における上限期間を導入するための措置を講じること」「移民が、収容の合法性について判断する裁判所の手続きに訴え出られるようにすること」も求めている。ウィシュマさんの遺族を支援する弁護士らは、収容が無期限であり、入管側のさじ加減で行なわれ、その妥当性が裁判所で問われないことなど、入管収容の制度・運用そのものがウィシュマさんを死に追いやったと批判してきた。実際、健康状態が悪化したウィシュマさんが治療のため仮放免を求めていたにもかかわらず、名古屋入管は「(帰国すべき)自分の立場を分からせる必要がある」として仮放免申請を不許可にしている。8日の会見でウィシュマさんの妹のワヨミさんは、「無期限に収容しないようにするという国連の勧告に従って制度を変えてほしい。姉のような犠牲を、もう出さないようにしてほしい」と訴えた。
 今回の勧告にウィシュマさん事件が強く影響していることは、DV(ドメスティックバイオレンス)に関する部分からもうかがえる。「法執行官のジェンダーに十分に配慮した訓練の欠如が、性的暴力とDV被害を受けた移民女性の虐待と二次被害化につながったとの報告に懸念している」と指摘しているのだ。駒井弁護士は「この部分は、まさにウィシュマさんのことだ」と指摘した。

仮放免中の困窮訴え

  自由権規約委員会は、異常に低い日本の難民認定率や、仮放免(一定の条件の下で収容施設外での生活を許可)の非正規滞在者の困窮ぶりも問題視した。8日の会見で発言したムセンブラ・サイさんは、紛争が続くコンゴ民主共和国からの難民認定申請者で、日本人女性と結婚し、3人の子どもがいるにもかかわらず、難民としても日本人の配偶者としても在留資格が得られておらず、仮放免中だという。サイさんは、「仮放免なので就労できず、生活が苦しい。3人の子どもがいて、家も狭いし、おいしいものも食べさせてあげられない。死にたくなる時もある」と苦しい胸中を語った。