社会新報

いのちの安全保障を求める-「共同テーブル」キックオフ集会で識者らが熱く論議-

(社会新報2021年9月15日号1面より)

 

8月28日、東京・永田町の星陵会館で、リベラル政治勢力を支援する識者団体「共同テーブル」の主催するキックオフ・シンポジウム「いのちの安全保障を考える」が開かれた。オンライン開催で、会場参加者も含め400人が参加した。

冒頭、評論家の佐高信さんが発起人を代表して会の趣旨を説明した。

佐高さんは「いま、重心の低い野党が必要だ。五輪をやってよかったという声におもねるようではだめだ。五輪開催は間違っていたと最後まで言い続ける野党が必要だ。『朝日歌壇』の選者を務めた歌人・近藤芳美は1964年の東京五輪開催中に五輪の歌を一首も選ばなかった。五輪が全く生活に根差していないからだ。私は講演で『オリンピックを止められないなら戦争も止められないんじゃないか?』と発言したら、参加者から『ドキッとした』と言われた。誰のための五輪だったのか、いのちの安全保障の視点から問い直していきたい」と訴えた。

連帯のあいさつでは、福島みずほ社民党党首、岡﨑宏美新社会党委員長、漢人あき子緑の党グリーンズジャパン運営委員(都議)の3人が登壇した。

現場とつながる運動

福島党首は「新自由主義といのちの両立はあり得ない。新自由主義とジェンダー平等は両立しない。今回、社民党は『弱音をはける社会へ』『答えは現場にある』の2つのポスターを作成した。全国津々浦々で地をはうような運動とつながっていく政党でありたい。新社会党や緑の党などと共に現場の運動とつながり、そのすそ野を大きく広げていきたい」と語った。

岡﨑委員長は「格差と貧困がこれほど急速に拡大する社会をつくり出した政治とは全く違う選択肢があるのだと言える政治勢力を」「今回、社民党から『統一名簿で一緒に頑張ろう』と呼びかけがあり、新社会党はこれを飾りなく受け止めて、率直に回答すべく、党内の意思統一を図っている。それは私たちの覚悟だ」と決意を述べた。

漢人さんは都議選当選で6政党・政治団体の推薦を受けたことに謝意を述べ、この勝利は自然環境を守る小金井市住民の「市民力」に支えられたものと述べた。

シンポジウムでは、植野妙実子さん(中央大学名誉教授)が憲法問題、竹信三恵子さん(和光大学名誉教授)が非正規労働問題、山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)が安保・平和問題、神田香織さん(講談師)が原発問題をそれぞれ語った。

植野さんは「アフガニスタンやコロナの問題が憲法改正の言い訳に使われる可能性を懸念している。緊急事態条項を入れろとか、軍がないからだとか、話をすり替える。言語道断だ」と指摘した。竹信さんは「どのような属性でも、経済的な自立ができないのであれば、公助で救うというのが大前提だ。たとえ少数派であってもその原点のある政党がほしい」と語った。山城さんは「先島諸島に自衛隊基地の建設が中国脅威論と絡めて進んでいる。沖縄県民は政府の無謀な戦争政策で一度ならず二度までも玉砕を求められるというのか」と怒りの声を上げた。神田さんは、講談「ローマ教皇との運命の出会い 原発事故で避難した少年の物語」を紹介した。

続けて、オンライン参加での発言では、上智大学教授の三浦まりさんが「市民社会がジェンダー平等に真摯(しんし)に取り組む女性政治家を応援し、増やしていくしかない」と訴え、戦争報道のジャーナリスト・西谷文和さんは「アフガンで故・中村哲さんは水路を造り、多くの命を救った。憲法9条を持つ日本の平和的貢献のあり方を示した」と訴えた。辺野古県民投票の会元代表の元山仁士郎さんは、沖縄防衛局が新たな護岸工事に着手したことに「悲しさと悔しさを覚える」と表現し、造形大学名誉教授の前田朗さんが「マイノリティーの人々が悲鳴を上げている。その悲鳴を聞こうともしないエリート・レイシズムに要注意」と強調した。

流れ変えるチャンス

経済学者の伊藤誠さんが「今こそ流れを変える、とてつもないチャンスだ。米国でさえ若者たちが社会主義を支持している。社民党と新社会党と緑の党に大いに期待している」とエールを送った。この他、ピアカウンセラーの安積遊歩さん、太田あゆみ高松市議(無所属)、杉浦ひとみ弁護士、彫刻家の金城実さんも語った。「共生連帯・近畿」から、『人新世の「資本論」』の著者・斎藤幸平さんが「共同テーブル」関西の呼びかけ人を引き受けてくれた、との報告があった。白石孝さん(官製ワーキングプア研究会)が閉会あいさつを行ない、「韓国のリベラル派の『共に民主党』が大きな力を付けた背景に膨大な市民社会運動がある。市民社会と政党が互いにキャッチボールをして高め合う。共同テーブルでもそうしたアプローチをしたい」と今後の方向性を語った。

 

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