社会新報

【秋の夜長の 講演会】 前川喜平さんの弁舌が冴え渡る~岸田政権「おかしいでしょ」

前川さんは岸田政権を斬りまくった(11月16日、東京・永田町の星陵会館)

前川さんのエールに応えて、福島党首が訴え。

 

(社会新報12月7日号1面)

 

 福島みずほ事務所主催「秋の夜長の講演会」が11月16日、星陵会館ホールで開催され、130人が参加。司会を東京都連幹事長の伊地智恭子・多摩市議と板橋総支部代表の五十嵐やす子・板橋区議が務めた。
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 冒頭、福島みずほ後援会長で作家の佐高信さんが、11月5日に急逝した早野透さんについて「掛け合いの相方」だったとしのびながら開会あいさつをした。
 続いて新垣邦男副党首が、「台湾有事」に備えるとした日米共同統合演習の下、「公道を戦車が走り、オスプレイが低空飛行で飛び回る」沖縄の緊迫した状況を報告。沖縄・南西諸島の戦場化を何としても止めるために、社民党のリーダーシップ発揮が求められていると訴えた。

岸田首相は安倍政治の後継者

 メーンのスピーカーは元文部科学省事務次官の前川喜平さん。タイトルは「それ、おかしいでしょ岸田さん」。前川さんは6つのテーマで岸田政権を斬った。
 第一に、安倍路線踏襲について。「首相は久しぶりの宏池会出身の総理総裁だが、言っていること、やっていることは、自民党の中でもリベラル、ハト派とされてきた宏池会の伝統とはまったく違う。結局、安倍路線を踏襲しているだけだ」と一蹴した。
 第二に、「国葬儀」強行について。「世論の猛反対を押し切り、憲法違反で靖国賛美、国家神道にまみれた国葬を強行した。自分こそ安倍政治の正統な後継者だと誇示するためだ。国葬で自衛隊中央音楽隊は『国の鎮め』と『悠遠なる皇御国 (ゆうえんなる すめらみくに)』を演奏。『国の鎮め』の歌詞にある『みやしろ』は靖国神社を指し、『皇御国』は万世一系の天皇が治める国という意味だ」と指摘。

人々の苦しみ、見えていない

 第三に、軍拡路線について。「安倍路線踏襲の典型が大軍拡。宏池会の大先輩、池田、大平、宮澤さんたちが草葉の陰で泣いているだろう。軍拡の財源は増税。どうしても増税するなら、身近な暮らし、とくに保育所体制の強化など、将来を担う子どもたちのために使うべきだ。こども家庭庁なんて、役所だけつくってもなんにもならない」。
 第四に、持論の所得倍増論について。「当初、掲げていた『令和の所得倍増』を実現する『新しい資本主義』は、どうなったか。いつのまにか、『所得倍増』が『資産所得倍増』に変わってしまった。稼いだおカネを全部つぎ込んでも生活できない、そういう人たちにとって資産所得なんて無縁な話。人々の本当の苦しみが見えていないから、そうなる」と喝破した。

統一教会、解散命令請求直ぐ出せる

 第五に統一教会問題について。「一番の問題は、自民党と統一教会の抜き差しならない癒着。自民党が本気で清算するなら、政治家個人の説明責任などと逃げずに、岸信介氏以来の統一教会・フロント団体との関係をすべて洗いざらい明るみに出し、自らの責任をはっきりさせるべき」と訴えた。
 さらに第六に、統一教会の解散命令について。「統一教会に対する解散命令の請求はすぐにでもできる。すでに民事事件、刑事事件で数十件の判決があり、判決の中には教団本体の不法行為責任が認定されたものが2件含まれる。根拠となる事実はそろっている。解散命令を出すかどうかは裁判所が決めることだが、請求は今ただちに可能だ。なのに岸田政府がやろうとしているのは質問権の行使。立法に携わった立場からすると、伝家の宝刀どころか、ただのタケミツで何も切れない。そんな質問権を使っても、統一教会は中味空疎な美辞麗句を並べ立てるだけ。岸田首相の国会答弁みたいなことにしかならない。質問権行使で解散命令にあたる事実がつかめれば請求すると言っているから、要するに解散命令請求はしない。つまり、質問権は政府・自民党にとっての時間稼ぎ。そんなことに使われる文化庁宗務課も気の毒だ」と語った。

「地べたからの民主主義」で政治を変える

 こんな政治がまかり通るのはなぜか。前川さんは立憲野党勢力が弱体化し、さらには分解しかねない状況を挙げる。「歯止めをかけるために、『おかしい』ことを『おかしい』と言い切る社民党をなくしてはならない。これからも応援し続ける」と結んだ。
 前川さんのエールに応えて福島みずほ党首が登壇。「政治は希望。希望がないと人間は生きられない。津々浦々の脱原発や反基地、環境の市民運動、労働運動とつながりながら、社会や政治を変えたい、変えられるという希望、それを地べたからの民主主義で実現していく」と力を込めた。
 福島党首が「地べたからの民主主義」の成果として高く評価するのが、青森市議選や氷見市議選の勝利。「この勢いを来春統一自治体選につなげるため、一人でも多くの候補者を。政治は嫌なこと、つらいこともあるが、それをはるかに上回るやりがいがある。一緒に頑張ろう」と呼びかけた。
 統一自治体選への挑戦を決めた予定候補が締めの発言。西尾綾子さん(埼玉・鴻巣市議選)、松本順子さん(東京・新宿区議選)、芦澤礼子さん(同・江東区長選)が、それぞれ飾りのないことばで決意を語った。

 

前川さんと福島党首。

司会を務めた五十嵐板橋区議(左)と伊地智多摩市議、福島党首(右)。