(社会新報2022年3月9日号3面【主張】より)
ロシアがウクライナに軍事侵攻した。いかなる理由があろうと主権国に軍事力を行使することは国際法に違反し、断じて認められるものではない。ロシアは直ちに撤退すべきだ。ロシアの攻撃におびえる幼い子どもたちや祖国から国外に必死で避難する人々の映像を見るにつけ胸が痛む。
同時に看過できないのが日本国内で〝火事場泥棒〟よろしく今回の事態を利用して憲法改悪を声高に主張したり、「非核3原則」(核を「持たず、つくらず、持ち込ませず」)を空洞化させようという発言が目だっていることだ。
例えば安倍晋三元首相はNATO(北大西洋条約機構)加盟国が採用している「核シェアリング」について日本でも議論すべきだと強調した。つまり「持ち込ませず」の放棄を訴えたのである。岸田文雄首相は参院予算委員会でこの考えを否定した(2月28日)。岸田首相は否定したものの、自民党内には安倍発言に賛同する意見が少なくない。
またこれに呼応するような動きが日本維新の会や国民民主党などからも出ており、警戒が必要だ。例えば維新は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて緊急提言をまとめ、「核シェアリング」や非核3原則を見直す議論の開始を求めている。被爆者組織である日本被団協は強く抗議し、撤回を求めている。
こうした動きに岸田首相が動揺することも十分に考えられる。どの世論調査でも「憲法改正」についての国民の関心は低い。改憲勢力が衆院で4分の3を超えたことから〝今がチャンス〟と躍起になっていることを考えると軽視できない。
さらに国会でも予算委員会開会中には開かれてこなかった憲法審査会が毎週開かれるようになるなど、動きが加速している。
こうした状況の下で社民党は「憲法改悪阻止闘争本部」を立ち上げ、参院選の取り組みと一体で運動を開始した。2月24日には「憲法連続講座」の第1回として「岸田政権でどう動く?コロナ禍と緊急事態条項」をテーマに、名古屋学院大学の飯島滋明教授が講演を行なった。飯島教授は、改憲をめぐる情勢を紹介しながら、緊急事態条項の危険性についてドイツやフランスを例に訴えた。
改憲の是非を問う国民投票を実施するには850億円かかるといわれる。飯島教授は講演で「そんな金があるのなら、いま苦しんで人たちのために使うべきだ」と力説した。正論だ。
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