社会新報

入管法改悪案の廃案を~国会正門前で怒りと苦しみの声

ウィシュマさんのワヨミさん(中央)とポールニマさん(中央右)が訴えた(4月21日)。

国会正門前に2000人が集まった。

 

(社会新報5月17日号3面)

 

 入管法の改悪に反対する市民らが4月21日、国会正門前で「入管法の改悪に反対する大集会」を開き、約2000人が抗議の声を上げた。反貧困ネットワークや#FREEUSHIKUなどが主催。一昨年に名古屋入管で死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの遺族も集会に参加し、壇上で発言した。
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 集会では、支援団体や弁護士らが次々にスピーチを行なった。移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)の山岸素子事務局長は、「移住連は14日から国会前の座り込みを行なっている」と報告。「座り込みをしながら国会質疑を聞いている。参考人3人のうち2人が元入管職員だ」と、参考人の選定の偏りを指摘した。入管法改悪案では強制送還を拒む人に対し刑事罰を科すとしているが、山岸さんは「在留資格を与えず、帰国できない人々を生んでいるのは入管だ」と批判した。

仮放免者の苦境を語る

 北関東医療相談会の大澤優真さんは、入管の収容施設の外での生活を許可されたものの、退去強制扱いの人々、いわゆる仮放免者の苦境を訴えた。「仮放免の方々は働けない、社会保障がない状態。アフリカのある国から命からがら逃げてきたある人は、難民認定申請したが不認定にされ、仮放免になっても働けないので電気やガスも止まり家賃も払えない。自殺未遂して病院に運ばれたが、治療費が払えず入院できなかった」と語る。
 さらに大澤さんは「仮放免者の状況は国連からも改善勧告されたが、現在の法案には、どこにも改善するようなことは書いていない」と指摘した。
 入管問題に取り組む学生主体の団体BONDの真栄田早希さんは、「私たちは、東京入管などで被収容者の面会を行なってきた。支援の現場から見れば、入管法の改悪が人を死に追いやるもの、何の道理もないことは明らかだ」と断言。「齋藤法相は、『保護すべき人を保護している』と発言しているが、今まで人を死に追いやるまで痛めつけてきて、当事者の事情を完全に無視して、自らを正当化しようとする、その神経が本当に信じられない!」と憤った。

当たり前の夢と真逆

 長年、入管問題に取り組み続けてきた児玉晃一弁護士は、「ちょうど2年前、国会で参考人として話したことをここでも話したい」という言葉から語り始めた。
 「国籍や在留資格に関係なく、全ての人が、家族と一緒に暮らす。迫害の恐怖から逃れ、不当な身体拘束から解放される。収容されていても、適切な医療を受け、命を維持できる。この国で生まれた(外国人の)子どもたちが、当たり前のように友達と一緒に成長できる。そんな当たり前のことが私の夢だ。今の法案はそうした夢とは真逆のものだ」
 これに対して、聴衆からは大きな拍手が送られた。
 入管問題をテーマにした小説『やさしい猫』の著者の中島京子さんもマイクを握り、「新聞での(『やさしい猫』の)連載を終えるころ、ウィシュマさんが名古屋入管で亡くなった。入管も法務省も謝罪していないし、誰も責任を取っていない。入管の権限を強めるというのは、盗人たけだけしいと言わざるを得ない。今ある法案は廃案にしよう」と呼びかけ、大きな声援を受けた。
 ウィシュマさんの遺族の弁護団の一人、指宿昭一弁護士も登壇。「ウィシュマさんが亡くなる前の映像を見たでしょうか。彼女は『病院に連れて行って』と訴えていた。入管職員は『ボスに伝える』と言っていたが、実際には伝えていなかった。ウィシュマさんを死なせてしまったことに何の反省もしていない法務省・入管に、入管制度を変える資格はない」と憤った。

ウィシュマさん遺族が訴え

 ウィシュマさんの妹のワヨミさんとポールニマさんはウィシュマさんの遺影と共に登壇。
 ワヨミさんは「入管で姉のように人が死なないように。ここに集まってくれている皆さんに感謝している。絶対にこの法案を通さないよう頑張ろう」と呼びかけた。ポールニマさんも、「姉の死の真相を究明すしようとしてくれている人々にこそ、法案をつくってほしい」と述べ、「齋藤法相は、私たちが公開したウィシュマの死ぬ前の映像について『勝手に編集した』と非難したが、大臣はまず謝罪して、責任を認めるべきだ」と反論した。
 主催の反貧困ネットワークからは、瀬戸大作事務局長がミャンマーからの難民のミョウさんと共に登壇。「私たちが支援する人々は皆、入管法が通っても母国には帰りたくないという。帰るくらいなら刑務所に行くと言っていた。こんなことを言わせてしまっている。入管法改悪案が通っても身体を張って守っていくが、そうならないように廃案にしたい」と訴えた。

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 メモ【入管法改悪案】今通常国会に提出された「出入国管理及び難民認定法」の改悪法案。4月28日の衆院法務委員会で与党と日本維新の会、国民民主党の賛成多数により可決され、5月9日に衆院本会議を通過。闘いの舞台は参院に移る。主な内容は、①難民認定申請は原則2回までに制限し、3回目からは強制送還の対象にする②強制送還拒否者に刑事罰を科す③条件付きで入管施設外で生活できる「管理措置」を導入④収容者は3ヵ月ごとに収容の必要性を検討⑤ウクライナなどの紛争地からの避難民を難民に準じて保護するーーなど。

 

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