(社会新報12月21日号1面より)
11月29日、在日米軍横田基地所属の輸送機CV22オスプレイが鹿児島県屋久島沖に墜落し、米軍は乗組員8人全員が死亡と認定した。日本国内での死亡事故は初めて。オスプレイは開発段階から安全性が疑われ、事故が多発。米軍は12月6日、全世界での飛行を一時停止すると発表。生産ラインは2026年に閉鎖される。社民党はオスプレイの永久飛行停止と全機の撤去を強く求める。問題点について専門家などからコメントを寄せてもらった。
「自動回転」機能ない欠陥機
半田滋さん(防衛ジャーナリスト・元東京新聞論説兼編集委員)
鹿児島県の屋久島沖に墜落し、全機飛行停止となった米軍のオスプレイは、もともとオートローテーション(自動回転)の機能がない欠陥機である。自動回転とは、エンジン停止時に下降気流で回転翼を回し、軟着陸する機能のこと。
2009年、レックス・リボロ元国防分析研究所主席分析官が米下院公聴会で「オスプレイが自動回転できないことは製造元も海兵隊も認めている」と証言し、機能の欠落が知られるようになった。
そんなオスプレイを在日米軍は30機、自衛隊は14機、日本の空で飛ばしている。今年7月、別の欠陥も明らかになった。米軍は米カリフォルニア州で昨年6月に起きた墜落事故について、エンジンとローター(プロペラ)をつなぐクラッチの動作不良が原因と発表した。
前出のリボロ氏は「クラッチの設計に欠陥があった」とし、再設計は容易ではないとの見解を示した。米軍、自衛隊とも操縦士の再教育、エンジン交換といった小手先の対応にとどめ、抜本的な改修は行なっていない。
製造元のボーイング社のホームページには顧客として、日の丸と星条旗が並ぶ。開発した米国と日本以外に買った国はないことを示している。いずれの政府も兵士や国民の安全を重要視するから購入を控える。日本政府の対米追従は異常というほかない。
「わが空」はいまも占領下
前田哲男さん(ジャーナリスト)
「わが空は我がものならず秋の空」
占領期に航空関係者がよんだ句だ。オスプレイ墜落の報を聞いて、つい連想したのがこれだった。「わが空」はいまも占領下にあるとして過言でない。墜落機捜索に(日本政府が飛行中止を求めた)オスプレイ3機が加わるブラックジョーク的事態にも明瞭だろう。墜落機の部品まで米側に引き渡し、原因究明を放棄する始末となった。
奄美での事故は「パープル・ルート」と呼ばれる九州~沖縄ルートで起きた。北海道から本州にかけて6ルートあり、最低高度60㍍での飛行が日米合意のもと許される。その空を、横田と普天間に配備された米軍オスプレイ30機が、日々、危険飛行を繰り返す。
事故歴からも歴然だ。ここ10年に限っても、ネバダ、名護、オーストラリア、シリアで乗員死亡を伴う墜落が起きた(名護の事故は「不時着」と発表)。根底に、ヘリと固定翼機の“いいとこ取り”した機体設計に問題があるのは確かだ。そんな欠陥機が事故後も飛んでいた。米軍は6日、世界の全てのオスプレイについて飛行を一時停止すると発表した。日本で起きた墜落事故を受けた措置だと説明しているが、停止はあくまでも一時的なものである。さらに、陸自が17機導入(木更津基地に暫定配備)、佐賀空港に新基地を建設中だ。次の事故は陸自オスプレイによって引き起こされるかもしれない。「43兆円防衛費」こそ糾弾されるべきだ。
平和な空を返せ!
青山秀雄さん(横田基地公害訴訟原告団副団長、昭島市議)
私たちの懸念は、オスプレイ機体そのものに欠陥があり、墜落の危険性があったことである。昨年もエンジンのクラッチの不具合で一時全面飛行停止したが、抜本的改善もないまま運用を再開した。墜落したオスプレイは横田基地所属であり、昭島市などの市街地上空で飛ぶ6機のうちの1機である。横田から岩国を経由して嘉手納への途中で墜落した。
万が一、市街地だったら、重大事故になっていた。
私は事故直後の昭島市議会で全オスプレイの運用停止、徹底した原因究明、安全対策、情報公開を求めた。情けないのは日本政府だ。米国に堂々と抗議も運用停止も求めていない。捜索中も沖縄では海兵隊のオスプレイが訓練していた。
米国には何も言えない不平等な日米地位協定の抜本的改善が喫緊の課題である。オスプレイは横田にも、日本のどこにもいらない。「立川にも来るな! 米国に持ち帰れ!」と訴え続ける決意だ。