(社会新報4月18日号2面より)
社民党副党首の大椿ゆうこ参院議員(会派=立憲民主・社民)は4月4日、参院厚生労働委員会で、労働者の権利の観点から経済安保新法案(セキュリティクリアランス法案)の問題を追及した。
同法案は、「重要経済安保情報」を取り扱う労働者に対し、国が「身辺調査」と適正評価を行なう制度を創設するもの。別名「身辺調査法案」とも呼ばれ、危険性が指摘されている。調査項目は評価対象者の犯罪歴、薬物の濫用、精神疾患、飲酒の節度、経済的状況の他、配偶者の家族の氏名・住所・国籍などで、内閣総理大臣や行政機関の長は、対象者の関係者(医師・カウンセラー・自助グループなど、範囲は広い)に必要事項の報告を求めることができる。
大椿議員は、同法案で調査する内容は、厚生労働省が採用選考時に把握しないよう企業に求めている、差別につながる事柄だと指摘した。
評価対象者がクリアランスを取得できなかった場合、その理由は対象者本人にのみ通知され、事業者には知らされないというのが政府の主張だ。しかし、大椿議員の追及により、事業者が労働者に不合格理由を報告させることを同法案は禁止していないことが明らかになった。事業者が不合格理由を聞き出し、対象者の家族の国籍や精神疾患歴を知ることで、配置転換や解雇をする可能性もある。同法案は、現行の労働法制が禁じる差別的取り扱いを誘発する。
政府答弁によれば、労働者がクリアランスへの不同意や取得失敗を理由に不利益取り扱いを受けたと感じた場合、国が設置する窓口に相談するか、事業主に民事訴訟を提起するしかない。クリアランスそのものが不適正だと感じても、行政不服審査法に基づく審査請求すらできない。大椿議員は、人権侵害の原因となる制度を作っておいて問題解決を事業者・労働者間に丸投げする国は無責任と批判した。