社会新報

【主張】沖縄本島南部の土砂採取-沖縄戦の戦没者への冒とくで人の道に反す

(社会新報2021年4月14日号3面《主張》より)

 

沖縄戦の戦没者の遺骨を含む可能性の高い沖縄本島南部の土砂を、米軍の辺野古新基地建設の埋め立てに使うことは許されない。

新基地工事は軟弱地盤の改良工事のため、当初予定よりも大量の埋め立て用土砂が必要となった。その調達先に、多くの戦争犠牲者を出した南部の糸満市米須地区などが含まれていることが判明している。

本島南部は、沖縄戦でもとりわけ多大な犠牲者を出した地域だ。日本軍が沖縄県に対して本土防衛の「捨て石」として玉砕戦を迫る状況下、米軍が本島を侵攻すると日本軍は首里の司令部壕を放棄し、南部への撤退を決行。その結果、住民が戦闘に巻き込まれ、犠牲者が激増した。

福島みずほ党首は4日、ユーチューブ配信企画で、沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんらを招いて話を聞いた。具志堅さんは「米軍基地を建設するために戦没者のご遺骨を海に埋める行為は戦没者に対する冒とくだ。防衛省は人の道を外れている」と怒りの声を上げた。

具志堅さんは3月26日、沖縄県副知事を訪ね、戦没者の遺骨が混じる可能性がある本島南部の土砂を辺野古新基地建設に使わせないよう求める署名3万2,800人分を提出した。具志堅氏や関係団体などが署名を呼びかけた。具志堅さんの訴えに端を発し、県内の各議会では南部の土砂を埋め立てに使用しないよう政府に求める意見書の可決が相次ぐ。

南城市議会は「激戦地の南部地区から採取した遺骨混入土砂が普天間代替施設の埋め立てに使われることは人道上許されない」と厳しく批判している。

厚労省は、戦没者遺骨収集推進法に基づいて遺骨収集とDNA鑑定を進め、遺族に遺骨を帰す事業を実施している。その事業の最中に、同じ政府の防衛省が遺骨の混じる土砂を海に埋めようとしている。

社民党の福島党首は、3月30日の参院厚労委で、遺骨収集を管轄する厚労省に対して「遺骨の収集は法律で国の責務。いまだに完全には終わっておらず、最近も10体の骨が出ている。防衛省を説得し、収集に協力せよと言うべきではないのか」と迫ったが、田村憲久厚労相は「(防衛省の)申請についてコメントは差し控える」と逃げの答弁に終始した。政府は遺骨収集の責務を果たし、南部土砂採取による新基地建設を断念すべきだ。