社会新報

馬毛島の軍事化を許さない-社民党調査団が南西諸島現地を行く-

(社会新報2021年7月21日号1面より)

 

福島みずほ党首や服部良一幹事長をはじめとする社民党の調査団が10日、米軍の空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)用の施設建設計画で揺れる鹿児島県西之表市の馬毛島に入った。一行は九州以南の南西諸島で進行する急速な軍事化の一端を視察しながら、「基地はいらない」という地元・種子島の島民と連帯して馬毛島の軍事化阻止に向け闘う決意を新たにした。

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防衛省が昨年8月に公表した「基地施設配置案」によると、馬毛島では甚大な騒音被害が確実に予想される米軍機のFCLPの他、陸・海・空の自衛隊の訓練が実施予定。そのための施設のみならず、巨大軍港や火薬庫・燃料庫の建設も計画されており、同島を南西諸島の一大軍事拠点にする意図が明白だ。

さらに防衛省は5月16日、「市民に騒音のレベルを体感してもらう」という名目で、「FCLPの実態を反映していない」という地元の批判を無視し、馬毛島の周辺に空自のF15戦闘機を旋回させる「デモ飛行」を実施。6月には種子島の中種子・南種子両町議会に続き、西之表市の市議会が、馬毛島の基地計画推進を求める意見書を可決するなど、同省と地元保守派が一体となった島の軍事化に向けた動きが強まっている。

島の自然破壊はやめて

今回の調査団は、基地を抱えた自治体の議員らで構成される党の基地問題連絡協議会のメンバーを中心に構成。この日、種子島の西之表市を訪れた一行は、さらに船で馬毛島の葉山港に上陸。案内で同行した「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」の長野広美・西之表市議(無所属)から、現状の報告を受けた。

長野市議は、かつては人が住み、「宝の島」と呼ばれたほど緑豊かで漁場にも恵まれた馬毛島を、開発業者が違法建設で島の総森林面積の44%を消滅させて滑走路を造成し、防衛省が評価額46億円の業者の土地を160億円で買収に合意するという不透明な経過で基地建設を強行しようとしていると説明した。

さらに長野市議は、開発業者による採石工事や採砂工事差し止め、防衛省による海上ボーリング調査阻止などのさまざまな闘いを振り返りながら、「貴重な生物も生息している島の自然をこれ以上破壊させず、種子島の平穏な生活を守るためにも、社民党をはじめ全国的な支援をお願いしたい」と要請した。

一行が島内調査のため港からさらに移動しようとした際には、開発業者の社員らが「社の土地に入るな」などと立ち入りを妨害。福島党首が「法的に誰にでも通行する権利は保証されている」と抗議する一幕も。

党首と八板市長が会談

その後、種子島に戻った一行は西之表市役所を訪問し、軍事基地計画反対を表明して1月の市長選で再選された八板俊輔市長と会談した。

福島党首は、「これまで無人島というイメージがあったが、実際に訪れてみて、島の歴史や文化、種子島の人々のこの島への思いを感じることができた」と強調し、「国会審議や行政交渉の場で何度も馬毛島の問題に取り組んできた。今後も安心できる島であってほしいという住民の願いを受け止め、平和構築のために互いに意見を交流していきたい」とエールを送った。

これに対し八板市長は、「馬毛島について関心を持っていただいていることに感謝したい。島民の中にもさまざまな意見があり、市長としてどう取り組むか気を使っている」と前置きしながら、「これまで基地と縁のなかった自治体に米軍のための施設を建設しようとするのは初めてではないか。ぜひ国民の間でも、このことの重大性について認識していただきたい」と述べた。

さらに八板市長は、「島民はこの1年余り勉強しているが、基地の実態や影響がどういうものなのかの理解はまだまだだ。そのため市としては国に計画関連のデータを出すよう求めているが、なかなか出さない。また、島の現地調査をお願いしているが、これも進まない」と、政府側の姿勢を暗に批判した。

米永さんの勝利へ協定書

この後、福島党首と服部幹事長は、調査団に加わった社民党の衆院鹿児島4区立候補予定の米永あつ子さんと、米永さんを「支持候補者」として決定した「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」との間の政策協定締結の場に出席。米永さんと同会の三宅公人会長が互いに協定書に署名した。

福島党首は、「鹿児島では戦後、1人の女性国会議員も誕生していない。コロナ禍で女性が厳しい状況にある中、社民党は米永さんの当選に向け全力を尽くす」と激励した。

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