社会新報

「差別されない権利」を認める~被差別部落地名リスト出版事件、二審判決は差し止め範囲を拡大

 

(社会新報7月12日号2面より)

 

 全国の被差別部落の地名リストをまとめた本の出版やウェブサイト掲載はプライバシー侵害だとして、部落解放同盟と被差別部落出身者ら234人が川崎市の出版社「示現舎」側に差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決が6月28日、東京高裁(土田昭彦裁判長)であった。
 二審判決は一審・東京地裁判決と同様に出版禁止と該当部分のサイト削除を命じた。さらに一審判決よりも出版禁止の範囲を広げ、損害賠償も約488万円から550万円に増やした。
 二審判決によると、示現舎は2016年2月、5360以上の被差別部落の地名や世帯数を一覧にした戦前の報告書『全国部落調査』の復刻版を販売すると公表し、その後にウェブサイトに地名リストを掲載した。
 高裁は「人には差別を受けずに平穏な生活を送る人格的利益があり、法的に保護される」と指摘。被差別部落出身と推測させる地名の公表はこの利益を侵害するとした。
 また、賠償の範囲について、地裁は「リストにある地域に現在も住所か本籍がある人」に対象を限定したが、高裁は「本人や親族の住所か本籍が、現在あるか、過去にあった人」に拡大した。
 その結果、出版禁止やネット上の情報削除を命じる範囲も、地裁よりも6県分増え31都府県分になった。
 判決の同日、原告団・弁護団が声明を発表した。声明は、高裁判決を「『復刻版 全国部落調査』や『部落解放同盟関係人物一覧』について、その情報の公開が部落差別を助長する違法な行為であることを認め、出版の差し止め、インターネット上での情報公開の禁止、二次利用の禁止、損害賠償の全てを認めた」と評価した。さらに声明は「『差別されない権利』を人格権の内容として認め、差し止めの範囲を拡大し、損害賠償を増額した判断は、高等裁判所の良識を示すものとして高く評価する」と強調。
 その上で声明は、「本判決があらゆる反差別の闘いにおいて活用され、差別のない世の中をつくることに活用されることを望んでいる」と表明した。