社会新報

【護憲大会第3分科会】 なぜ「家族」を狙うのか~斉藤正美さんが講演

オンラインで講演した斉藤正美教授(11月13日、松山市)。

 

(社会新報11月30日号4・5面)

 

 59回の開催を数える護憲大会で、今回初めて「ジェンダー」をテーマにした分科会が11月13日、松山市内で開催され、80人が参加した。講師に斉藤正美さん(富山大学非常勤講師)を招き、『なぜ右派は「家族」を狙うのか〜統一教会問題から読み解く』と題して、オンラインで講演と質疑応答が行なわれた。
 旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と自民党議員が、国政選挙の際、政策協定を交わしていたことが明らかになり、社会に大きな衝撃を与えた。しかし、宮崎県都城市の男女共同参画条例や、七生養護学校などへの激しい攻撃が行なわれた2000年代ごろから、安倍元首相と旧統一教会などの宗教右派との密接な関係は知られていた。斉藤さんは、12年に発行した山口智美さん、荻上チキさんとの共著『社会運動の戸惑い フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動』(勁草書房)でそのことを指摘したが、ほぼ注目されることがなかった。
 21年12月、安倍元首相が旧統一教会の関連団体・天宙平和連合(UPF)の集会に送ったビデオメッセージで、「UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を強調する点を高く評価いたします」と話している。ここで言う「家族の価値」とは何を意味するのか。斉藤さんは自民党の憲法改憲草案に注目する。自民党は憲法24条に、「家族は社会の自然かつ基礎的な単位として尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」とする1条を新設しようとしている。また、憲法13条は、冒頭の「すべての国民は、個人として尊重される」の部分を、「全て国民は、人として尊重される」に変更しようとしている。ここから読み取れるのは、「個人」よりも「家族」を強調し、家族の助け合い=自助を義務化する思想である。自民党が旧統一教会と交わしていた政策協定には、「家庭教育支援法及び青少年健全育成基本法の制定」や『LGBT』問題、同性婚合法化の慎重な扱いが盛り込まれていたが、これらは、「家が整わなければ国が乱れる」という考えに基づいたものであると斉藤さんは指摘した。
 昨今見られる、フェミニズムに対するバックラッシュやトランスジェンダーへの攻撃にも、これらの動きが影響を与えている。
 会場との質疑応答では、LGBTの当事者から、「この流れが進んだら自分は守られない」との不安の声が聞かれた。
 武井たかこ愛媛県議会議員は今夏の参院選に触れ、「社民党からはバイセクシャルの当事者である村田さんやロスジェネ世代の大椿さん、岡崎さんなど、当事者がしっかりと声を上げていた。当事者が声を上げていくことが、何よりも政治を変えていく力になると思った。そこに希望を感じ、反転攻勢の可能性を感じた」との意見を述べた。
 最後に斉藤さんは、これまで「性・生殖・家族」の問題に対するリベラル側の優先順位が低かったことを問題にし、「国防」の強化には「家庭の統治」が必要であると考える自民党の改憲草案を阻止するためには、憲法9条と24条をセットで考え、対処することが必要だと強調した。