社会新報

参院選結果どうみる 識者らが語る㊥

(社会新報2022年7月27日号1面より)

 

改憲阻止の運動を強め世論形成
日本体育大学教授(憲法) 清水雅彦さん

 今回の参院選で、改憲勢力が3分の2以上を獲得した。一方で、立憲民主党と共産党が議席を減らし、社民党は現状維持にとどまった。ただこれは、世論調査でも示されているとおり、有権者が積極的に改憲を望んだ結果ではない。野党共闘の不十分さも要因である。昨年の衆院選では、今回以上に野党共闘ができた。しかし、昨年も今年も立憲民主党と共産党が議席を減らしたのは、野党共闘が間違っていたからではなく、それぞれの党の足腰の弱さの反映と見るべきである。社民党も比例区得票率増で安心してはならない。

 ただ、今回の結果を受けて、改憲勢力は改憲への支持が得られたと解釈し、改憲に向けて動きを強めるであろう。昨年の衆院選後の憲法審査会を見れば分かるとおり、日本維新の会と国民民主党も改憲の議論に前向きなので、憲法審査会自体を止めるのは難しい。

 そうであれば、まずは昨年の憲法改正手続法改正時に加えられた附則4条の改正をすべきである。また、同法の2007年制定時に参院で18項目、14年改正時に衆院で7項目、参院で20項目の附帯決議がなされたので、この「宿題」も片付けるべきである。憲法審査会は「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行[う]」組織なのだから、戦争法などの憲法適合性についても議論すべきである。

 さらに、選挙結果だけで諦める必要はない。初めての改憲は失敗が許されない以上、国民投票で勝てる見込みがなければ発議はしない。衆参両院で改憲勢力が3分の2以上を占めた安倍政権でも、改憲はできなかった。政治は国会の中だけで決まるものではない。改憲阻止のための運動を通じて世論形成すれば、改憲は阻止できる。また、同時に次の衆院選に向けての共闘づくりもしていこう。

 

 

野党は戦い方のアップデートを
東京新聞記者 望月衣塑子さん

 今回の選挙は後に「歴史的」と語られるかも知れない。応援演説中の安倍晋三元首相が凶弾にたおれたということだけではない。確かに「弔い選挙」という色合いはあったものの、投票率は前回を3・25ポイント上回る52・05%で、無党派層が大きく動いたわけではない。自民圧勝という結果は報道各社の情勢調査の通りだった。銃撃事件は野党惨敗の理由にならない。

 何が歴史的だったのか。一つは、野党がまとまらなければ、政府批判票を議席に反映できないことがあらためて立証された点だ。もう一つは、「投票したい党がないから、自分たちでつくる」とうたい、ユーチューブやSNSを駆使した参政党が、比例で約176万票も集めたことだ。ネットを介した「共感力」でつながる新しいスタイルが将来、「組織力」に頼る旧来型を凌駕(りょうが)する可能性を示唆している。

 既存野党は戦い方を変えなければならない。東京新聞の調査では、東京の有権者が投票で最も重視する観点は「物価高・景気」の26・0%で最多だった。東京選挙区は自民、公明の3人が当選し、得票数は計約229万票。一方、野党の当選は景気対策として消費税減税や廃止を訴えていた共産と立憲民主、れいわの3人。立民と社民の落選候補の票を足すと約235万票で逆転する。さらに国民、維新を加えた「減税」勢力は約317万票に上る。

 今回、野党候補者の一本化は32選挙区で11選挙区のみ。負けた選挙区で野党票が自民に肉薄したのは秋田、福井など5つあった。善戦できないのは有権者ではなく、選択肢を用意すべき野党とその支持団体の問題だ。とりわけ連合・芳野友子会長の責任は重く、組織の衰退は避けられない。厳しい言い方だが、政府批判票を選挙区の議席につなげられなければ、野党の存在価値はない。簡単ではないのは承知だが、再編も視野に野党こそアップデートしなければならない。

 

 

社会新報ご購読のお申し込みはこちら